最近、家に沢山あるVHSテープに録画された過去の古い試合をDVDにダビングする作業をしています。ですから多くの試合を見る機会の中でふと気付いたことがありました。もちろん僕はボールを持っている人を追うのですが、ボールキャリアーには2種類あることに気づきました。テレビ放送されていますので、確実に1部リーグの学生や社会人の試合です。つまり「出演者は皆一流である」と定義づけてもそれほど乱暴ではないでしょう。
まず1種類目の方です。それはズバリ「タックルされたくない」という気持ちが強い人です。ボールキャリアーは多くの場合ランニングバックではありますが、どのポジションでもだいたい同じような印象を持ちました。もう1種類はもちろん「とにかく最後までもがいて暴れて前進してやろう。相手のタックルなんて怖いと感じた事ない!」という普通の選手です。
え?ボールキャリアーは誰だってタックルされたくないのでは?ええその通りです。もちろんそうです。たくさんタックルされたいなあと思っている選手など居てません。僕だって現役選手の頃は「今日は1度もタックルされずに活躍してやろう!」なんて考える日もありましたから。
タックルされたくない。そこだけを切り取るからややこしいのですね。つまりタックルされたくないという気持ちが、少しでも前に進む!という当初の目的よりも強く表に出している人が存在するのです。敵にボールを持っている事が見つかってしまい、逃げることに夢中になるや否や前進する気持ちを喪失するのです。元々の目的がガラスのように砕けるのか、落し物としてどこかに落とすのかは不明ですが、何しに出てきたのか全くわからない選手が存在するのですね。
アメフトをしていない、普通のマトモな人間ですと体当たりされそうになっても全く気にせずそのまま自分の道を行ける精神力は持ち合わせていないでしょう。そうなのです。その選手は至ってマトモな人間なのです。生物としてけがを追う危険をいち早く察知し身を守る。それは自分の命や家族や子孫の命を守ることにも繋がる誰しもが持っている本能でしょう。
ただし、激しい体当たりがあるのが最初からわかっている極めて特殊な競技を選択したのは自分であり、活躍したり勝利したりを目標に活動しているのも自分の意思のはずです。ボールを持って走れば毎日体を鍛えてタックルの練習ばかりしている大男らに激しく体当たりされるのは承知の上でプレーしているはずなのに、どうしてそれほどいやがるのだろうか??
おそらくですけど、予想ですけど、心の奥では多分怖いんです。怖がっているのです。過去にどんな嫌な目に遭ったのか存じませんが、競技中に恐怖にも色々な種類があるのでしょうけれど要するに恐怖から逃れたい為にエネルギーをそちらに向けすぎてしまうのでしょう。
実は残念ながらこのような人は指導しても上達が非常に遅い事も分かってきました。「怖がらずに突っ込めよこのヘタレ!」なんて囃し立てたところで恐怖が心を支配しているのでその恐怖に打ち勝とうとするあまり、逆に気持ちが入りすぎて身体中に力が入って硬くなったりで持ち前のしなやかで俊敏な能力を発揮するのを「逃げる」と言うベクトルに向きすぎてしまうようです。
エンドゾーン方向に逃げられる場合はナイスゲインやナイスプレーとなるので良いのですが、基本は敵と激突せずとにかく逃げたいので残念なことにその向きは敵陣に向かった縦方向ではなく、横方向になる事が殆どです。
顔を下げるか目を閉じるかして「エイヤー!」とテキトーに相手へ突っ込むタイプの人も居ます。下を向くとか目を閉じるという行為は現実から目をそらす最も簡単な方法ですので彼らはこれを多用します。しかし目を閉じたまま、前が見えないまま、通常時と同じ速度と力強さで約20人がひしめくフィールドを駆け抜けられるハズはありません。
これはどうやら体が大きい小さい、強い弱いとは比例しないようです。初心者の時にやってた練習方法が原因なのか、それとも生まれつきの怖がりなのか、そもそも練習量が足らないのか、原因はわかりませんがとにかく心の問題です。しかしそこにゆっくり時間をかけなければいけない選手は本場米国ですと淘汰されて選手生命は終わりですが日本では何かほんの少しの才能があればチームに存在する事が許されてしまいます。
痛む体や折れそうになる心にムチ打って、最初から最後までハードにプレーし続けられること。テレビに映るレベルのフットボール選手であればそれがスタートラインだと思います。いつかは2部に上がろう!なんてレベルやっていた僕ですが、上のレベルに行けば行くほどそんな弱虫は減っていきました。
パワハラ問題もあり怖がっていたり痛がっている人に「無理してガンバレ」は通用しない時代です。怪我を負うリスクを抱えて体当たりの練習をたくさんするか、怪我しないように柔らかく練習するか、この線引きに正しい答えはありません。
日本で1番のアメフト選手になれば家族を一生養える大金を手にする事が出来るわけでもありません。頭や体を強く打って未来を失うかもしれないと怯える選手に無理強いすることは出来ません。
怖がらず敵をかわし安全に体当たり出来る「上級者」になるにはとにかく練習しかないのですが、よほど自分の逃げ足に自信があるのでしょう。そんなヘタレが僕の教えている選手らには存在していないのがせめてもの救いです。
心技体という言葉がありますが、ランニングバックはこの3つのキーワードをもっと分解してそれぞれを鍛え上げていく必要があります。これはまた次回以降に検証していきたいと思います
では皆さん本年度もありがとうございました。良いお年をお迎えください。
ライスボウルが楽しみですね。また新年にお会いしましょう!
