多聞コラムVol,290「タモン式教本50」フットボールはタックルとブロックやbyサト藤田

シーズンが深まってまいりましたねー。色んなリーグのゲームを見ていて思ったんですが、ハードヒットが少ないなと。ペチャっクネっカチャンてゆうわずかな接触音ばかりで。フットボールはもっと体と体がぶつかり合う激しいスポーツのハズなんですがねー。

僕はフットボールを始めて防具を付けるか付けないかの頃にいい加減なチームに所属して居たので基礎から当たり方などをキッチリと習ってきていません。いわゆる「タックル」「ブロック」と言われているスキルです。ただ、子供の頃この激突がステキに見えたのでフットボールの虜になりました。

僕がアサヒ飲料時代に藤田ヘッドコーチが「フットボールはタックルとブロックや!!」と度々叫んでおられました。その部分が疎かだと檄を飛ばされるチームメートを気の毒だなあと完全に他人事として横から眺めていました。僕のポジションはボールを持つ方(ボールをあまり持たないランニングバックもある)のランニングバックですので、ランのブロックもほぼしませんしタックルをする機会も滅多にありませんでしたから。

ただし、ボールを持っているとタックルされたりの激突はありますしパスのプロテクションはしますからフットボール特有の激しく体当たりする「ヒット」というスキルはとても重要なのは理解していましたしどちらかと言えば得意なほうでした。

この「タックル」「ブロック」が上手いチームがニッポンのフットボールではトーナメントでは上に行っているのを読者の皆さんはご存知でしょうか。取った点数や走ったヤード数、パスを通した回数や距離などはきめ細かく数字で見られますが、「タックル&ブロックが正確で強いメーター」は存在しないので、先ほどの「フットボールはタックルとブロックや!!」の意味がわからない者が現在のニッポンフットボール界に増えまくっています。

「フットボールはタックルとブロックや!!」の原理原則を重んじているチームは全員にキッチリと認識の共有がされており、タックルとブロックが苦手ではチームの役に立たない。という価値観が自然に刻まれているようです。

僕の場合はフットボールを「体当たりが許可されているオモシロ競技」と捉えていますので、タックルとブロックが強くなる為に時間を注ぐべきだと心底思っています。チームを管理する側の人は「体当たり練習は怪我のリスクがある」という思いがありますし、怪我が怖いならそもそもフットボールをやるなという時代でもありませんので課題は多いと思います。最近では日米ともにヘルメットの上にクッション付きのお帽子を装着したりで安全管理をしています。これはNFLの練習でも採用されていますがおそらく対外的なアピールだと僕は思っています。

NFLの練習中でも「ヒット」自体はありますが、近年では脳しんとう問題もありますしやみくもにがむしゃらにガンガンと体当たり練習はしていません。彼らは当たらずに「当たる練習」が出来るスキルを持っていますから。これはボクシングや武道などでも同様に上級者は「寸止め」も上手いのです。僕も少年時代に空手を習っておりましたが、寸止めルールの組手(スパーリング形式の練習)でも誤って拳が相手の顔にヒットしてしまい怪我させてしまうミスをよく起こしていました。ヘタクソの白帯でしたから。しかし大人の先輩や師範らといった上級者同士ではそのような事故は一切起こらず凄まじいスピードで技を出し合っておられました。上級者は当てるのも上手いですが「寸止め」も上手いのです。

上手く寸止めが出来ない同士でタックルやブロックの練習を本気ですれば、思った以上の勢いで激突してしまう事故が起こってどちらかや両方が怪我を負ったり痛い思いをします。フットボールの練習現場ではこれらが日常茶飯事でありそれらをどうやって乗り越え、向こう側へ行くのかがトーナメントの頂点に立つ為には最重要案件のひとつであると思っています。

作戦や分析で戦えるのは囲碁将棋チェスなどのいわゆる「マインドスポーツ」と呼ばれるものであって、それらに比べるとフットボールは駒となる選手の耐久性や能力が安定せず、指揮官の思惑通りに行かないことがしばしばです。駒が期待通りの役割を果たさないことがあるのが「格闘技兼リアルスポーツであるフットボール」の面白さでもあるのですが、昨今はあまりにもその部分を見ないようにしている関係者が多いように感じます。

作戦や経験だけで相手を翻弄できているウチはそういった事をチーム内で誰も真剣に考えないでしょうし、必要だと感じないのは無理もありません。しっかりと訓練されている選手の多いチームには勝てない「アンダードッグ」「かませ犬」として存在し勝ち星を捧げるために貴重な現役の時間を費やせば良いでしょう。

強くヒットせずにゲームレベルのタックルやブロックの練習は出来ませんが練習の内容を工夫すれば空手のように「型」だけでもかなりのレベルまで高められます。今まで気にもしなかった些細なことにも目を向けて取り組み「絶対うまくなってやる」と強く思って指導を受ければ必ず上達します。「俺はある程度できている」と思うと上達しません。

NFLを筆頭に強いチームのゲームは激突音が非常に激しく、1つのプレーで何回も何回も聞こえてきます。でも強くないチームのゲームではそのような音は1ゲームで2回3回程度しか聞こえてきません。激突を避けるのが上手いのではなく、相手にしっかり当たることが出来ないんです。練習をしていないし重要と思っていないから。

先日、テレビのバラエティ番組で東京大学の拳闘部が取材されていて、スパーリングなどをせず基礎練習ばかりで練習が終わったことでスタジオにいるタレントらから笑いが起こっていました。しかし当の本人らに聞くと「勉強で基礎の重要さをしっかり理解している。だからボクシングでも基礎練習をするのは当たり前だし苦にならない」と当然のように答えていました。これも2022年の若者の自然な言葉ですから、(我々のような)昔の人間だから気合いと根性で基礎ばかりするとかではなく、格闘技の要素を含んだフットボールという競技に対して甘く考えているかそうでないかの個人差だと思います。

当たるのが嫌いで嫌いで逃げ回ってトップに立てた選手って居るんですかねー?タックルとブロックは、投げたり走ったりという誰もが子供時代から経験している部分ではなく、あまりにも特殊な行為ですので自然に出来るようにはならないでしょう。昨今の社会人リーグではアメリカ人のボールキャリアが多く存在しています。僕のようにほんの少し引っ掛かれば転けてしまうようなのは居てません。彼らにはしっかりタックルしなければあっという間にタッチダウンされてしまいます。守備選手はタックルスキルを昔より高めなくてはいけないのですが、誰がその位置に行くかというような作戦のことで頭がいっぱい。その場所に行けばプレーは止まる。という思考だけでは、お金を払って見せるほどのフットボールは出来ないはずです。会場にいる人全員の予想を超える激しい肉弾戦の出来るチームが強いんです。実業団だから、外国人だから強いのではなく、タックルとブロックがちゃんと出来るから強いんです。

しっかりとしたハードヒットで試合を盛り上げてほしいです。もちろんルールに則って。

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