接戦であればあるほど僕が指導しているランニングバックらも活躍するのが難しくなります。相手の布陣や隊形だけを見て「ああ、これは走れないや」と先に決めてしまう指導を受けてきた選手が少なくない現代のランニングバック、いやフットボール選手全般。
最初に習ったのがそういうテレビゲームのような感覚なので、意識改革してもらうだけで数年かかる場合もあります。「こんなんじゃ本物になれないからどうにかしたい!」とタモン式ランニングバック養成所の門をたたいて来てくれた選手らには「ラムズやチーフスみたいなNFLと対戦してるんじゃ無いんだからどうにかなるって!」と意識を変えてもらうところから始めています。
守備選手が前に居ても、そのままブチ当たってぶっ倒しても良いめっちゃくちゃ特殊な競技をしているのだから、敵をヒラリヒラリと避けることダケが作戦じゃ無いんだよ。といつもしっかりシゴいているのですがタモン式ランニングバック養成所から前代未聞の不祥事を起こした選手が出て来ました。
ボールを持ってサイドライン際を駆け上がってる時、守備選手が追い詰めて来て勝手に「もうダメだ」と思ってしまいサイドラインに自ら出てプレーが終了。しかし守備選手はゲインされた腹いせにボールキャリアがサイドラインを出て2歩目を踏んだと同時にタックルをして来たのです。それに腹を立て、持っていたボールをその守備選手にぶん投げたと同時に審判団から黄色いハンカチを山ほどぶん投げられました。
現役当時の僕自身はサイドラインを割るというプレーをあまり多くしてこなかったので、それほど多くやられた経験はありませんが、数十回は「今のん出てるやろ!遅いわ!」と守備選手に文句を言ったことはあります。このようにボールキャリアがサイドラインを出ていても力を緩めない守備選手は多く存在しています。理由はただひとつ。反則にならないからですね。
サイドラインを越えてからタックルしても、力を緩めなくても反則になりにくいと何十年もの統計でハッキリ出ているんですから、タックルをサクッとやめる守備選手やサクッと辞めさせる指導者が居るわけないですよね。逆に、我々ボールキャリアはそのグレーなプレーをされて当たり前として覚悟して用意しておく必要があるのです。これは相手のスキームやスキルなどをビデオを見て勉強したり覚えたりなどと同じです。怪我をしないためにも、無駄に転かされないためにも、構えておく必要があるのです。
しかし、大したゲインもせずのんびりとマイペースでサイドラインを自分から割って、勝手に「もうプレーは終わった終わった」と判断し毎度いらっしゃるサイドライン上のタックラーにキッチリヒットされ、それを予想せず不意を突いて来た汚い反則行為と勘違いしてボールを投げて対抗。
怪我をさせられそうになった危険プレーだとアピールして暴力で抗議するなら、空気しか入っていない500gかそこらのモノを防具を装着している屈強なオトコに投げてどうなるってもんじゃないでしょう。なんの仕返しにもならない。
今回は相手のプレーも反則とジャッジされ、こちらの「500グラム空気玉ぶん投げ行為」も当然反則として、相殺されました。
1センチでも1ミリでも前にボールを進める為に年がら年中悩んで苦しんで頑張って来てもこんな馬鹿馬鹿しい事で15ヤードだかを奪われてしまうのですからそんな勿体無いハナシはありません。つまんないことでヒートアップして取り返しのつかない大事になってしまっては文字通り全ての努力が水の泡となります。チーム関係者全てを落胆させ、同じように頑張ってきた仲間を裏切ることに繋がります。
皆さんが街中でイラッとするような出来事に巻き込まれそうになっても、この場をイキってイライラを発散させるのが得か、知らん顔して去るのが得か、僕なんかよりずっとよくご存じだと思います。今回もまさしくそれで、ゲーム中に「プレーする」こと以外でエネルギーを使っても仕方ありません。
しかし、どんな物静かな人でも些細なことでキレておかしな行動に出るかわかりません。もし今回の「500グラム空気玉ぶん投げ行為」をした彼が相手の目玉でも突きに行ってたらフットボール界がお終いになってしまいます。
幸い、フットボールのサイドラインには沢山の人がいますので、ラフプレーのような事があった場合には傍観せずとにかくその瞬間に敵味方関係なく当事者を抱きかかえてなだめてください。体当たりしてどこかに連れて行ってください。
このような事件はテレビで観たこともありますし日本のフットボール界でも「マレ」に起こっています。この反則自体は良くないことなのですが、瞬間的に怒りが沸騰するというのも稀有な存在であり才能でもあります。元々の人間性がそうでなくては不可能な行為なので、真似しろと言っても絶対に無理な人には無理な反応ですよね。優しく育てられ、気づけばフットボール部に入っていたなんて人には不可能。時間をかけてイライラして陰湿な仕返しするのが関の山ってやつです。
日本の多くのチームでは練習や試合の前に「気合を入れていけ!」と檄を飛ばされますが、荒くれ者の多いアメリカ人のチームでは「落ち着け」「気持ちを安定させろ」「怒りに任せて暴れるな」と言われたりしますと、このコラムでも幾度かお話ししていると思います。僕もそういうタイプですので、この激情型な性格であれば練習や試合だからとわざわざ気持ちを高める必要がなく、気持ちを抑えてプレーに集中すれば良いだけなので僕は有利だと思っています。あとは発散する方法や方向性を正していく必要がありますがそれは本人はもちろん、先輩や指導者の仕事でもあるので、僕のお弟子さんである限りは僕の責任としてしっかり教育する必要がありますね。
今節は審判との衝突事故があったりしてますし、アホな反則で審判員に余計な仕事を負担させず、ハイレベルでハイクオリティなジャッジに集中してもらう努力を、プレーする側も心掛けてほしいものです。
重要な試合が続くシーズン後半、体調を壊さず大きな怪我もせず、アホな反則もせず、高いレベルのパフォーマンスを最終戦まで発揮できるのが「本物のランニングバック」と言えるでしょう。もっと本物になるためだけに気張って欲しいもんです。
というわけで選手もコーチも審判も含めて関係者のみなさん、病気せず怪我せず最終戦まで突っ走りましょう!!


