多聞コラムVol,274「タモン式教本43」 価値観を合わせる

トムブレイディの引退撤回で現役続行ニュース驚きましたねえ。どうせならスーパーボウル未出場の4チームに行ってあげて欲しかったのですが。

さて僕も本格的にコーチを始めて数シーズン経ち、たくさんのチームでたくさんの選手に関わってきました。コーチに就任したら指導を開始する前にタモン式ランニングバックを伝承するにあたり、守ってもらいたい事があるので口約束ではありますがしっかりと契約します。この口約束というか「男同士の気持ちと気持ちの契約」がしっかり結ばれると指導がスムースに進みます。

内容は「これまで習ってきたフットボールとランニングバック術を一旦忘れて、血を全部入れ替えるつもりでタモン式を取り入れられるか?でないとコーチしないよ。僕らの指導は君らがしらない事ばかりだよそれでも大丈夫?」です。

これに口と心のサインをしたら、以前に習った技や考え方にタモン式を上書きしていきます。そこには「考え方」に「守るべきこと」そして「努力して身に付けなければならないこと」を幹にして枝分かれする細かいことまで毎日毎日物凄い量の情報を注入していきます。

そしてしばらくすると1つ目の問題が発生します。情報が多すぎて憶えられないという問題です。ランニングバックというポジションは本能むき出しで野生的に動く事が得意な人が多い傾向があります。学校の勉強のようなややこしい話を好まない性質です。言ったことをやっていませんから見ればわかりますので早期発見できます。この場合は本人のキャパシティを超えているだけなので、指導ペースを調整すれば良いだけです。

また別の問題も起こります。「男同士の気持ちと気持ちの契約」ですが大抵はそのチームのエース格とだけ交わします。現代のフットボールはNFLもそうですが試合やシーズンを1人のRBだけで戦うことは少なくなってきています。ですからエース格の引退や怪我で試合に出場する可能性があるメンバー全員とやっておかねばならないのをつい忘れてしまっており、あまり指導に従ってくれない選手の動向に問題が出てきます。そういう選手は、若い頃の現在より低いレベルでの成功体験がフットボールの全てだと考えているのでコーチしているこちら側が赤面するような酷いプレーや言動を起こします。この場合も、見ればすぐにわかりますし自分の指導が行き届いていないだけのことなので、時間をとっていけば解決に向かいます。

そして次に問題なのはわかったフリをする選手です。これが最も扱いづらい。わざとわかったフリをしていればまだマシですが、自分じゃわかっているのかわかっていないのか?も理解できていない状態の人です。反対意見があってイヤなのか、意味がわからないのか、理解していないことが恥ずかしいのか、それがバレて叱られるのが怖いのか、色々と理由がありますがこういう選手は非常に指導が難しいんです。他スポーツの偉大な指導者らの記事で読んだのですが、イヤだなと思ったら顔に出したり意見を述べてくれれば一緒に考えて話し合って解決できるのだと。

黙っちゃう選手って意見をしないような教育を受けて来たのでしょうけど、自分の青春や人生を賭けたフットボールなんだから上手くなる為には手段なんて選んでる場合じゃないと思うんです。ましてや遠慮して1年2年を過ごすなど絶対に有り得ない。この齟齬は「男同士の気持ちと気持ちの契約」をしっかり交わさなかった人と起こります。

で、僕なりに少し考えてみると次のキーワードが出てきました。それは「価値観」です。例えば恋人や夫婦間では同じものを見て笑ったり、同じものを欲しがったり、というあの「価値観」です。高校生の頃なら音楽やファッションやバイクに女の子のことなど、気の合う友人らと楽しく同じ時間を過ごした時に話せていたのはこの「価値観」が同じだったからでしょう。

その後、大学でフットボールチームに入りそれなりにしんどい中で非常に楽しい時間を過ごせたのは「優勝したい」「入替戦に勝ちたい」「タッチダウンしたい」などの「価値観」が似た同士のチームメートらと時間を共有することが幸福だったからなのだと思います。

僕の場合だとそのあと東京の実業団チーム「三武ペガサス」に入団しました。そこでは大学時代から日本一を目指してトップ選手を張っていた有名選手らがしのぎを削っていました。選手だけでなく会社の人らもみんなが「日本一になる」「日本一になりたい」というチームでした。ど素人に近かった僕にとってとても気高く神聖な皆んなの目標に同行させてもらえる喜びでいっぱいでした。しかし結局は僕の「価値観」が先輩諸兄と同じだったからこそしんどいキツい痛いを後回しにして自分の上達だけを夢見て毎日を過ごせたんだと思います。

もちろん毎日の練習や活動で納得の行かない指導を受けたり叱責を受けたりは度々ありました。腹が立って腹が立って試合中に先輩選手に楯突いたこともありました。日々起こる細かな事に不満はありましたが、大枠の目標である日本一のチームになるという事に加えてその舞台で自分が無くてはならない存在にまで成長するんだという部分での「価値観」は揺らぐことが無かったわけです。残念ながら三武ペガサスでは目標を達成する前に所属するメンバーそれぞれの「人生における価値観」が変わっていきチームはバラバラになってしまいました。同じ価値観で集結し結束していたメンバーでしたが時間と共に年齢を重ね、考え方つまり「価値観」が変化したわけです。仕方ありません。

今シーズンもランニングバックの指導者をする機会を頂いていますので、指導対象となる選手たちとどこまで「価値観」を近づけていけるのか。この「価値観」がタモン式メソッドの根幹として非常に重要ですので「男同士の気持ちと気持ちの契約」も大切ではありますが「コーチ多聞の価値観=コーチ多聞の考える正しいランニングバック像とはコレだ!」をわかりやすく順に説明しながら彼らの考えや気持ちを認識し、お互いの理解を深めて一緒に進めていければなと考えています。「タモン式の価値観」は僕の頭の中とこのコラムにしか書かれていません。学ぶことが嫌いで面倒くさがりな選手は微塵も読んでいませんので知識ゼロ状態です。これじゃあ選手の成長はありませんからね。

「僕はずっとタモン式でやってきているのでタモンさんの指導がなきゃダメなんです」と言ってくれた選手が居て、危うく本人に涙を見られるところでしたが根性でしのぎました。指導して貰っていた時は人生で最も苦しかったけど感謝していると言ってくれる人もだんだん増えてきました。関わったどの選手にもそんな風に思ってもらえるように今年も飛び抜けて日本一厳しいランニングバックコーチとして皆んなのサポートをしていきたいと考えています。

ランニングバック諸君、一緒に目標達成しましょう!

タモンズスタイル10mar2022

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