多聞コラムVol.266 質疑応答の回

東京都の緊急事態宣言がまん延防止に変わってくれたお陰で僕のお店「ゴリゴリバーガータップルーム」でも限定的ではありますが久々にお酒を提供しても良くなり、ちょっと嬉しいです。お店の名前の後半「タップルーム」はビールの専門店って意味です。店の名前に「酒売ってます」とあるのに売ってはならないルールはとても困りました。まあ僕たち飲食店もそうですが、ビールを作っておられる酒蔵さんも同様にお酒が売れませんので大変だったことでしょう。でもまあこれから少しずつですが夜にお客様が戻ってきて下さる事を願っている中村多聞です。みなさんこんにちは。

今回は読者の方から頂いた質問にお答えする形で書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

質問(大学チームの指導者):以前短期講座に参加させて頂いた者です。中村さんはコラムでも書いておられますし、講座でも仰っていましたが守備に囲まれた時に頭から突っ込まず自分が一番走りやすい形のまま走りなさい。と言うことですが、低い姿勢になって当たっていくのはダメなのでしょうか?

回答:ダメではありません。これはタモン式で唱えている事でも捉え方で解釈が違ってきてしまう代表例のひとつです。この問題はいくつかの前提がありまして、それに該当している場合とそうでない場合では少し違ってきてしまいますのでわかりにくいかもしれませんがご説明いたします。

まず、敵に囲まれそうだったり挟まれそうだったりで横に逃げたりかわしたりする事の出来ないシーンに於いて、対人でヒットするのはそこそこ強いという自負もあり、初級者だった大学生の僕はそういうシーンでは頭を下げて突っ込んでいき、出来るだけ足を動かして少しでも前に進める。という「一択」でプレーをしていました。それ以外の作戦といいますか方法を知らなかったのです。それでもこれは甲子園ボウルなどのビッグゲームで諸先輩らが何度もやっていた動きを真似ようと練習を積んで習得した「技」ではありました。

その10年後ぐらいにプロのアメリカ人とフットボールをする機会に恵まれ、彼らが試合で使う「技や方法」を何百プレーと観察してきましたが、もちろん彼らも頭から突っ込む事が何度もありました。現在テレビで見るNFLでもそういったシーンは度々見ることが出来ます。

しかし彼らは僕と違い「一択」でプレーしていません。ボールを前に進める事を職業にしている最高峰の方々ですから、多くの選択肢から最も効果的であると「判断」して実行に移しています。彼らの凄さの要因の一つである「判断力」で割り出された回答がたまたま頭を下げて突っ込むことだったわけです。

で、「低い姿勢で突っ込むの一択」な理由は、昔の僕の場合は単に知識がなかった事が理由です。NFLなども偶には観ていましたが、実戦で使えるほど奥深く理解していませんからね。

ただ現代のプレーヤーが「頭を下げて突っ込むの一択」な理由は昔の僕のように知らないからだけでは無いのです。これがややこしい。

僕もこの数年、現場でいろんなレベルの選手にレクチャーしてきましたが、試合そのものの経験や活躍の経験が豊富な選手であれば「さっきみたいな敵に囲まれそうになった時に頭を下げたりせずにそのまま走ってみ。出来るならもっと加速して」とその彼にとっての初体験を注文します。選手はちょっと困った顔になりますが、経験豊富ですから何度か試すウチに出来るようになります。

でもコレを教えても決して出来ない人らが一定数存在するのです。それは「痛がり怖がりな子ら」です。フットボールで活躍しようと思うのであれば、相手との激突からは避けられないと知っている筈なのですが、とにかく心と脳で拒絶反応してしまうので「敵が目の前にいるのにそのままの姿勢で走って行け」など、高層ビルから飛び降りろと言われているのと同じレベルで怖がるのですね。これでは高いレベルのフットボールで結果を出す資格がありません。怖いのですから相手に衝突すると反則になるフラッグフットボールが向いていますね。

でもそんな気持ちが微塵もわからいわけではありません。先日のコラムでインタビューしたプロ野球を目指す吉村選手も大学1年で初めて防具を身につけた時「プロテクターといっても体の一部分しか覆っていないじゃないか!と驚いた」と仰っていましたもんね。初心者の目線だとそうなんだと僕はあの時初めて知りました。その初心者に毛の生えたレベルの選手が屈強な守備陣が束になって待っている所に、スピードをどんどん増した上に顔をあげて防具がついていないお腹から激突しにいくなど、出来るわけがありません。

ま、根性なしにフットボールは出来ない論が大前提ではありますが、殆どの選手がかなり嫌がる「技」ですが守備との対戦ではとてつもなく強大な武器となる「スピード」を最後の最後まで使って相手のタックルが取れてそのまま走り抜けられるかもしれない!に望みをかけるか、敵がいるから少しでも前にボールを置くために転けるのを前提に低い姿勢で突っ込むのか。を「怖い」とか「気合いや」とかではなく、技として作戦として選択できるようになりましょう。というのが言いたいんです。

大抵の選手は頭を下げて突っ込んでいく練習ならどうにか形になります。しかし胴体を立てた状態で当たっていく練習は全然出来ません。怖いからです。で、これが怖いやつはランニングバック辞めろよと言いたいところですがそういうわけにも行きませんので、コツコツ訓練していくしか道はありません。でもフットボールの真髄はこんな事ではありませんのでここに時間を多く割けないわけですが、ボールを持ったランニングバックは殆ど全てのプレーで敵にタックルを喰らい激突されるのですから、指示された作戦を遂行しつつ飛び出してくる敵を自分の好判断で技を出し続けないとなりませんから、怖がって心に余裕が残っていない人は選択肢など持てずその場しのぎで「それなりに頑張るだけ」という選択をしてしまいます。

怖くて痛いから苦手で嫌いですよね。だからランニングバックの活躍を望むコーチはそのような事をすべて克服してもらいたいわけですので、体を立てて突っ込もう!をしっかり強調して練習に取り組ませていかないと結局「頭を下げての一択」なのであれば極端な話もうそれは出来るので練習しなくて良いわけです。判断も覚悟もなくサラッと出来るんだから。でも頭から突っ込むの一択で高いレベルの敵チームを打倒できるわけがないんです。突っ込むの怖い人が「エイヤー!」と目を閉じてブルブル震えながらやってきても大した力にもなりません。

ランニングバックだけでなくフットボールは幾つかのポジションを例外として、基本は格闘技です。集団でどつき合う競技です。相手より強い体と心を作り上げ、作戦の遂行の為の偽装や嘘を自然に演出し、体がボロボロになるまで戦う競技なのです。

怖いからあの方法は使わない、痛いから嫌だ、なーんて意見が尊重されるのが嬉しいのか、大切な試合に勝つのが嬉しいのか?

痛がり怖がりのヘタレはそれも「楽な方」の一択なのかもしれませんね。

では結論です。答えは「人による」です。ヘタレを試合で使わねばならないのであれば時間とエネルギーをかけて強くしてあげる。良い選手が居るならばもっと斬れるように研いであげる。

選択肢を増やそう!というのが僕がそのような事を唱えている理由でした。レベルに合わせた注文をしてあげてください!

あ、そうだ。頭を下げて突っ込むのも実はとても奥が深く難しい技術が求められます。前方向にオフバランスになってフルパワーで激突する直前から直後まで足を一切止めずに動かしておかねば全然前に行けずその場でコケてしまいます。1度目でちゃんと出来た選手は強かった頃の京大OBだけでした。僕はこっちが苦手なので体を立てたまま突っ込む事が多かったです。これは海外の大きな敵だったとしても同じです。自分の得意技で勝負。そして足を止めない。難しいですよー!

タモンズスタイル25jun2021

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