多聞コラム24may2017_vol,167「ゴリゴリ多聞、自伝を語る75」チャレンジャーズ10

 グァム島キャンプを無事に終え、週末のNFLヨーロッパトライアウトの日を迎えました。昨年度はこの日を「審判の日」とし、猛烈に緊張して臨んだ事を思い出します。2015年1月22日号参照。例によって「どんな人間でもこれ以上の事は出来ない筈だ」と心から信じられるまでの事をやって来たと言いたいところではありますが、昨年合格している事、実際に世界を経験して来た事、日本代表に選ばれた事、エックスリーグに爪痕を残せた事、が油断につながってしまいました。実際のところ、トップリーグの試合に常時出場する選手として日々を過ごす為のコンディション作りに追われてしまい、それほどの鍛錬を遣り尽くして来れたとは言えません。

とは言え、怠惰な生活を送っていたわけではなく日本人ランニングバックとしてのフィジカルは体躯も含めてトップレベルにあるという自信はあります。その上アメリカ人とのプレー経験が上乗せされているので、100キロ以上の体で40ヤード走4秒5も出しておけば「動けているな」と審査員に印象付けられる事は間違いありません。

試験会場には昨年と同じくNFLヨーロッパ最高責任者の「オリバーラック氏」が登場。コルツのエースQBであるアンドリューラックのお父さんです。「よー!マイジャパニーズブラザー!元気やったかー?!」なんてフランクな挨拶を頂き「(合格発表)記者会見の時、ワールドボウルリング持って来れるやろな?」と聞かれました。試験の受付でです。他の受験者も周りに居るのに。そうです。僕が合格する事は彼の中で決まっているのです。それはさすがに周りの関係者に「おいおいおい」と制止されていましたが。

フットボール未経験者も居た昨年度ほどは受験者も多くなく、40ヤード走を始めとする体力測定はサクッと終わりました。そしてボールを使うMan & Manのドリルです。僕もワイドアウトの位置につかされてコーナーバックと対決します。アメリカ人の考えるマンカバーのやり方と、受験者の考え方が違いすぎて僕にいくらでもパスが通ってしまいます。

それを見かねたアメリカ人試験官が半笑いで「おいタモン、ちょっと今のディフェンスバックに正しいやり方教えたってくれや」と言い出す始末です。僕もライバルに良い情報をサクッとくれてやるのは嫌でしたが、アメリカ人にとっての大切な事をいくつか伝えました。でもそのような練習をして来ていないし、チーム内でもそういう需要がないので日本では必要のない戦い方なのでしょう。

そして翌日「合格者の記者会見があるので東京へ来てください。あ、タモンさん合格ですもちろん」という連絡をNFLジャパンから電話を頂戴し、来期の参戦が決まりました。しかしその記者会見は平日の月曜日です。勤めている会社を急遽休まねばなりません。スグに直属の上司に電話しました。日曜日の夜遅くに。「また何ヶ月もアレ行くんかお前。受験する前に報告しておけよ。まあ明日の記者会見は仕方ないから休んで良いよ」と叱られてしまいました。

今年度の合格者は僕と河口マーサ、そしてルーキーとして鹿島建設RBの堀口靖(立命館OB)、マイカルのQB辻(東海大OB)でした。

そして記者会見が済み、会社に戻るのですがまた数ヶ月の休職が確定した僕に上司があまり良い顔を見せません。会社としては応援してくださってたのですが、モロに迷惑のかかる上司の不愉快度は計り知れません。というわけで手取り13万円の会社を辞めることにしました。バーをやり出してまだ2ヶ月未満。開店時期と年末が重なってお客様が多くいらっしゃっているだけなのに軽い気持ちの皮算用。13席のバーだけで暮らしは成り立つのか。でも手取り13万円で良いならイケるんじゃないか?社会保険はどうする?年金は?までは深く考えず「どうにかなるやろー!」とノリで退職&独立してしまいました。

好きなフットボールのプロ選手をする為に会社を辞めて小さなバーを経営する。マシな話に聞こえますがこの選択によって僕の未来に様々な事が起こります。でもとりあえずNFLヨーロッパのフロリダキャンプに向けて調整を強化して行くのでした。

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