多聞コラム3nov2016_vol,147 役立たずの黒い超人

 リーグ最終戦。地元相模原でのホームゲームに首位の富士通を迎え我が「ノジマ相模原ライズ」は崖っぷちの戦いに臨みましたが無念の敗戦。これでプレーオフには行けなくなってしまいました。結局今シーズンは1勝5敗。リーグのシステムが今年から大幅に変更されたとは言え、とんでもない結果を出してしまいました。

優秀なアメリカ人選手が夏から3名補強され、今年はノジマが優勝候補だ。なんて言われていたのに何やってんの?と思われた方も多いと思います。また応援して下さった方には残念な思いをさせてしまい大変申しわけありませんでした。

生で試合をご覧になった方は、彼らの活躍や躍動感に度肝を抜かれた事でしょう。部分部分での動きはNFLを彷彿とさせる切れ味があり、敵守備を圧倒する事もしばしばでした。QBのガードナーはパスとランで合わせて14個ものタッチダウンを取っている事からも活躍の度合いがわかります(リクシルの加藤さんはパスだけで15個ですが)。

しかし、ブランクがあった上で夏からの急な参加で調整不足、日本の高い湿気と高い気温に体がいつまでも慣れて来ず、その上食事も合わないという「涼しい所から来た外国人なら当然」な事故が頻繁に起こる上にチームメートとのコミュニケーションも英語ではなかなかうまく行かず、深いニュアンスやリクエストなどはザックリした状態。そしてNCAAでトップ選手だった彼らが真摯にエックスリーグを戦う事はもちろん出来ません。いわゆる「ナメてる」という事です。ライズそのものも含め、選手やコーチ、全てを敬わず「VIP」を気取り、初戦を落としても日本フットボールの兵法にまだ気づかず何の対策も出来ないどころか心を入れ替える事も無く結局1勝5敗。

練習で投げる球威と、敵に追われながら焦って投げる球威では倍も違うようで、日本人レシーバーでは捕球する事で精一杯。時には球速が速すぎて、手と手の間を抜けてしまうような事まで起こってしまいました。

先日のNFL放送で解説者の森さん(リクシルヘッドコーチ)が最後にポソっと仰いました。「結局チームを勝ちに導くQBに価値がある」と。ヤードを稼いでタッチダウンを幾つ決めても勝たせなければ価値がない。という我々への愛あるメッセージだと勝手に思いました。

先週のコラムでは「必死のパッチで頑張ろう」と選手達に檄を飛ばすような事を熱く書きましたが、間違っていたようです。ミスしているのは我々コーチなのです。

マイアミドルフィンズで偉業を達成した名コーチ「ドンシュラ」が言っています。『私は長年選手やコーチ陣の能力を引き出すことに専念してきた。つまるところトリックプレーに走ったり、斬新な作戦を導入したからといって勝負に勝てるわけではない。互いのデータ量に差は無い。では勝つためにはどうすれば良いのか。チームプレーに徹して力を尽くすと言う気構えを、選手や部下に持たせることだ。これは実に大事なことだ。結論を言えばそれがコーチの仕事なのである。』

名のあるアメリカ人選手だろうと、地方リーグの補欠だろうとチームプレーに徹して力を尽くす事が重要だという名コーチのお考えです。僕も当然そういうコーチに恵まれた時に能力以上のものを発揮できた経験があります。これをアメリカ人にも徹底させられなかった指導側と運営側にミスがあった事は否めないでしょう。「目標は優勝だ」とは分かり合えていても言葉が通じない人との意見交換や意思伝達は永遠に不十分です。日本人同士ですらわかり合って理解して共感し合うのは非常に難しいわけですから。

専門の通訳を用意するなど、何か良い手段を考えねば日本や日本人に敬意を払わない外国人選手は単なる爆薬。使い方によっては敵地ではなく自軍の基地で爆発し味方を多く倒してしまいます。英語が話せるコーチが居ても意思疎通ができるのはその人だけで常時通訳してくれるワケではありません。日本人同士でいつもやりあっているプレー中の微妙な会話が出来ません。アメリカ人がミスても「おい、ちゃんとやれよ」すら言えない雰囲気、選手それぞれは自分の事で精一杯ですから英語で何か言うのもしんどいし時間もかかるし‥‥。臨時ポジションコーチの僕や、こう言った事に違和感を持つ選手らではこの問題を根本から対処することはできません。

寒い日も暑い日もライスボウルを目標に頑張って来たのに、1年を棒に振らざるを得なかった選手らの悔しい気持ちは計り知れません。選手にとっての1年間は本当に長く大変な時間です。仕事や家族、怪我ともうまく取引してやっとの思いでフィールドに立っていたのです。勝っても負けても選手たちが納得のいくシーズンを過ごす事が出来れば良いなと思います。

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