多聞コラム31mar2016_vol,125「ゴリゴリ多聞、自伝を語る56」グリーンベイその2

パッカーズのサマーキャンプ2日目で意気揚々とパッカーズと契約した初めての日本人になる日がやってきました!

グリーンベイパッカーズのキャンプはランボーフィールドからクルマで5マイル(約8キロ10分)のところにある「セントノーバート大学」で行われています。夏休み期間なので学生は殆どが帰省などで居なくなっており寮も空いています。ミーティングなどは教室などを利用します。食堂も学食で食べ放題システムです。NFLEの時よりもメニューに幅がありゴージャスです。明らかにお金のかかり方が違っています。アイスクリームコーナーには専門のお姉さんが待機しています。新聞なども取り放題。あちらこちらにチームグッズが放り投げてあり持ち帰り放題です。フットボールに関心が有る無しに関わらずたまに会う学生さんらからは羨望の眼差しです。そりゃあそうでしょう。僕と河口マーサ以外はスーパースターです。まだNFLでは成功していない人でも大学、高校時代は街で知らない人がいないほどの有名人の集まりです。

プロの選手は体つきが一般のアメリカ人とはまるっきり違うのでベンチに座ってサングラスとヘッドフォンをしながらアイスクリームを食べていても「(パッカーズの)フットボールプレイヤー」だとひと目でわかります。筋肉の隆々差では河口マーサもNFL選手に負けていません。しかし僕は100キロ以上あったのですが当時はまるっきり普通の日本人留学生な感じで、アメリカ人には「テニス選手か?」とよく尋ねられました。

学食で朝食を頂き、渡米2日目、活動初日がいよいよやってきました。まずは契約です。ランボーフィールドまでチームのバンで連れて行かれオフィスで偉いオッちゃんが何人か待っていました。メディアも来ています。サインするシーンではストロボがバシャバシャッとなり無事にパッカーズの一員となれました。

次は衣装を合わせます。エキップメント長が案内してくれます。「お前ら、ここでヘルメット貰えや!」とバンバンとテーブルを叩いて若い衆を呼びつけました。若干口が悪い風です。目は完全に笑っていて良い人そうですので問題はなさそうです。ヘルメットは基本「RIDDEL」ですが他のものも指定できます。フェイスマスクも好みのタイプをリクエスト出来ます。あごひももいろいろありましたがいつも使っているものを貰いました。その次はスパイク、人工芝用のシューズ、グローブ、そしてショルダーパッドです。「よっしゃほんならロッカー行こか。そこで着替えて練習場行けや!午前はハーフパッドや間違えんなよ!」と次の動きを教えてくれました。

余談ですが流行に敏感な僕は在庫で最も小さなものを選択しました。90年台前半からNFLではショルダーパッドはクッション部分の機能が向上したことにより段々小さくなってきました。日本では体を大きく見せる為にとてつもなく大きなものが流行しており、フットボール専門店で「NFLみたいな小さいのを買いたい」と訴えても「危険だから」と絶対に売ってもらえませんでした。選手が怪我しても10円の見舞金を出すわけでも無いクセにね。

ここまで、全部黄色と緑をあしらったチームカラーのお宝グッズばかりです。グローブだけがスポーツ屋でも売っている通常タイプでした。その他の短パン、スウェット上下、ソックス、ウィンドブレーカー上下、キャップなどなど「必要かもしれないもの」を全て渡されました。

そして個人用ロッカーに案内されるとそこに先ほど選びまくった防具類など全てが既に置かれているではありませんか。そして背中に「NAKAMURA」と書かれた練習用ジャージーが吊ってあります。感動です。僕は20番。ランニングバックとしては申し分のない番号です。ライオンズのバリーサンダースと同じです。

オフェンスは白いジャージー。ディフェンスは緑のジャージーで練習します。そして獰猛な守備選手が気合入りすぎて間違ってタックルしてしまわないようにQBだけ赤いジャージーを着て目立つようにしています。NFLではQBと他の選手の体力差が有り過ぎて危険なのです。とは言ってもこの時のQBは4人とも190センチ100キロクラスです。こんなのが日本にいれば間違いなくQBではありません。そんな連中がいわゆる「虚弱なポジション」「虚弱な肉体」と位置付けられているのです。異常な世界です。

この時のQB4人をご紹介しておきましょう。まずはご存知【4番ブレットファーブ君】僕と同い年。歯の矯正をしているので口の中に違和感が有り食べるのに不自由。陽気でリーダーシップ旺盛なみんなのキャプテン。

【18番ダグペダーソン君】ひとつ上。NFLEの前身であるワールドリーグ「ニューヨークナイツ」からマイアミドルフィンズ入りした希少なドラフト外入団の生き残り。無口。面白みゼロ。でも人のギャグにはちゃんと笑う。2015までカンザスシティチーフスのオフェンスコーディネーター。2016シーズンからフィラデルフィアイーグルスのヘッドコーチ。でその後スーパーボウル制覇。2023年からジャグワーズのHCも3年でクビ。

【移籍の補欠デイビッドクリングラー君】同い年。NCAA時代はラン&シュートでライフルアームと言われドラフト1巡でシンチナチベンガルズ入り。鳴かず飛ばずでNFL最後の年にパッカーズ入り。常時眉毛が下がっており自信なさげで気の毒。ギャグ言う余裕なく何をやっても上手くいかない感じ。

【新人で補欠マットハッセルベック君】ドラフト6巡目の新人くんだけど見た目はオッちゃん。後にホルムグレン監督がシアトルに引っ張りスーパーボウル出場。お笑い大好き。彼のオモシロ逸話はここでは書けない。

4人のQBとは1日2度の練習で何十回もハンドオフとパスキャッチをする機会がありましたが、やはりブレットファーブがダントツなのです。桁が違うんです。NFLEQBらはクリングラーやハッセルベックと同レベルですので、僕としては慣れた感じです。しかしペダーソンは1枚上。そしてその10枚ほど上なのがブレットファーブでした。圧倒的に違うので「何が違うの?」と聞かれても「まるっきり全てが違う」としか答えようがありません。投球ひとつとっても柔らかいタッチ、コントロール、威力、スピード、全てが機械みたいで絵に描いたような精度でボールが飛んできます。基礎基本の動作も含めキッチリこまめに最後までプレーをやり切ります。

この「やり切る」という感覚が日本とアメリカの違いが大きく出る部分でもあります。これはまたそのうちお話しします。 つづく

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