多聞コラム7oct2014_vol,61「ゴリゴリ多聞、自伝を語る25」チームのエースリターナーを目指して

 日本のフットボール界において、一流と三流の差は何か?これは「基礎」の差だと思うてます。これは努力で埋まるのに当の本人が重要視していないと中々埋まらない事がしばしばあります。

三流の選手が三流のチームで三流の敵を相手にチョコチョコやっているのと、甲子園ボウルだとかライスボウルに出ている選手やコーチとは脳みその中が何百倍も違います。いや、何千倍も違います。コーチは考えるだけですが、選手は瞬間瞬間で色々な判断をして相手を凌駕する必要もありますので、そもそもの用意してある知識と経験の量が物を言います。コレが大きい。この差を埋めるのに僕は何年掛かった事か。というか差は埋まらずに引退を迎えたと思います。

結局のところ、DIV3DIV2の大学出身者がエックスリーグで大成する人が中々出て来ないのは、感受性豊かな青少年時代。つまり基礎の時にいい加減な事をやっていたので、「フットボールってこんなもんだ」というとてつもなく甘い認識が細胞の奥の奥まで染み付いてしまっているのです。

僕の場合は、防具を付けたのは中学生の時ですが、試合の戦力としてしっかりプレーしたのは20歳を越えた時です。チーム内に手本となる多数の年上や先輩が居なかったので、テレビを見て、マネをするだけのフットボールでした。何故このように動くのか?何故この練習をするのか?全ては自分達が気付くか気付かないか、にかかっていました。そんな状態では「正しい基礎」を構築する事は不可能です。ただ、僕はあまりにも多くのNFL映像を小さい頃から脳みそに刻んでいたので、日本の強いチームでもやっていたテクニックや戦術には違和感を憶えた事は少なくありませんでした。例えばタックルに行くとき、頭を下げて足元に突っ込むとか、タイムアウト欲しさに怪我したフリをする、パントをゴロで蹴るとかです。

能力もフットボールIQも3流な僕でしたが、日本のトップレベルフットボールの全てを肯定していたわけではありませんでした。しかしそんな細かい事よりも、何とかして自分を他人様に認めてもらいたい。この一点を目指す事にしてしばらく経ちましたが中々まだまだマニアの間にしか「中村多聞」の名前は通っていません。

大学を出て三武ペガサスで3年。サンスターに移籍してテレビ放送に初めて登場した時は「26歳の新人、ランニングバック中村ですねえ。体重が100キロです。鹿島からの移籍です。」と解説者に言われる始末です。まだまだだなあと痛感しました。

26歳でまだまだ日本の業界内に名前が通っていない自分が、どうすれば専門誌や新聞、テレビに出て、フットボールファンやスポーツファンの人々に「中村多聞」の名前を知ってもらい、「彼は名選手だ!」と思ってもらえるようになれるのか?

その為に、目立つ方法を前に少し書きましたが、結局の所「肝心な場面」や「期待されるシーン」で活躍するかそうでないか?だけなんだと思うのです。

三武ペガサス、サンスター、アサヒ飲料時代にはキックオフのリターナーとしても出場していた僕ですが、いずれも強固な守備が看板のチームでしたので何しろロースコアゲームばかりでした。つまりリターンの回数が極端に少ないのです。その時に僕側にボールが来るとも限りませんので実際に数年間でリターンした回数(ファンブルロスト2回/タッチダウン1回)はとても少なかった中で、注意していた事があります。

リターナーとして僕が注意していた事、絶対に守らねばならない事。それは1人目にタックルされてしまわない事です。横に逃げるのは最後の手段として、1人目は余程の事情が無い限り縦方向にかわしてもらいたい。

秋のリーグ戦が始まり、社会人リーグの観戦に行っていますが、とても気になるのがリターナーが1人目にタックルされているシーンの多さです。パントのリターン、キックオフのリターンいずれもです。そもそもかわそうともせずに諦めてアタマから突っ込んで行くシーンもありました。ライスボウル出場を公言している各チームのエースリターナーがそんなレベルでは、いくら優秀な外国人選手を起用してもオービックの5連覇は揺るがせません。

ボールを持った者は味方のブロックが失敗していようがウマく行っていようが、1人目を自分の能力でどうにかしなければならない、という大前提を心の底から理解すべきです。何なら2人目も自分が処理するんだという意気込みが欲しい。この場合の「役割」はエースとしての役割ですから、1人に1つだけ与えられている「アサイメント」とか言う、チームの作戦など関係ないのです。

リターン時に1人、2人をかわすファインプレーで前進すれば、チームにとってどれだけ気持ちの上でパワーとなるか。ボールを託されたエースとして「上級者気取りの勘違い野郎」が目ん玉をひんむいてヨダレを垂らして必死のパッチで暴れてくれたら日本のフットボールがどれだけ面白くなるか。

NFLのカッコいい選手に憧れて、グローブやユニフォームの着こなし、生意気な身のこなしといったチャラチャラした部分では無く、人生を賭けた渾身の生き方とプレーを真似ないと。

日本の選手には、ボールを持つという事に覚悟と責任が全然足らないように見えます。チームとチームメイトの運命がそのボールに乗っているのです。ボールを持ったら良いカッコせず全力で走れ。アナタ達の能力で思いっきり走れば、タックルされて吹っ飛んでもファンはその心意気に感動します。サイドラインの仲間達はそのハートを見て発奮します。何を目指しているのか?何が怖いのかサッパリわかりませんが、チョコマカチョコマカと逃げ惑うエースの姿は誰の心も動かしませんし、敵チームにとって何も怖くありません。「あいつウワサだけで根性無しのヘタクソやな」となります。

「本当は上手い」「本当は強い」「練習だったら凄い」「彼はチームで一番だ」という意味不明な成績表をもらって喜んでいるウチはまだまだ2流。

自分の本当の気持ちと実力を「ココ!」っていう場面で見せてくれない人はニセモノです。トップリーグで日本一を目指す資格は無いと言えるでしょう。

トップチームのエース諸君に「ハートのこもったプレー」を期待します。

日本で最も偉大なリターナーのひとり

京都大学アサヒ飲料の吉田昌弘(34)

相手との間合いが日本で一番遠いランナーです

間合いが一番近いのが僕です(2014年現在)

160cm代の小さな体で5m先のDFをフェイントで転ばす技術でゲームブレークする高校ラグビー経験者

写真のシーンは東京スーパーボウルで50ヤードほどの独走TDでゲームブレークしました。僕は目立ったもん勝ちでMVP獲得しましたが、真のMVPは彼です。

全く怖がったりせず、勇敢に取りにくいボールも押さえに行き、何度も何度も良いフィールドポジションからオフェンスが開始出来ました。時にはロングゲイン、独走TD、あれほどのリターナーは参加したあらゆる日本にチームに居ませんでした。

尊敬する選手のひとりです

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