スポーツで将来はトップになる。と夢見ている人は多くいらっしゃるかと思います。記憶が無い程の幼年期から親御さんの希望でそのスポーツを始める人、自身の希望で学校やクラブで始める人、色々な人が居ます。
殆どの人にとって「上手くなって良い選手になる」のが目標だと思います。目指す目標は人それぞれで世界一や地域一、今日の自分より上、色々あります。
競技をやってみて段々上達。楽しいだけの時間がしばらく続き、あるときに越え難い壁が立ちはだかります。世界を目指す人はこの壁を何度も何度も努力工夫して乗り越えられる人です。でも結局はその時だけの努力では太刀打ち出来ない時が来てしまうので初心者の時からしっかり準備しておきましょうというお話しです。
まず最初、深く考えずに毎日楽しく練習をしています。自分に合う競技やポジションであれば自然とドンドン上達します。試合にも出たりして中々の活躍をするようになってきました。そしてある時に「もっと早く動ければな」「もっとパワーがあればな」となったら黄色信号です。
体力や体格があってのフットボール。引退するその日まで「技術と体力」は成長させていかなければ運動家として失格ですが、この「技術と体力」の成長順序が重要です。先に「技術」が育ち、その後に「体力」をつけて身体を変化させると競技成長期に身に付けた技術が良い方向に行く事もありますが、残念ながらそれは稀なケースです。特にフットボールなど球技の場合は動きがあまりにも複雑な為です。
「知識や経験ほぼゼロ」の時に反復練習で身に付け、やがて中上級者になった身体の操作技術は、とても繊細に複雑に身体と脳に刷り込まれています。
身体の細かった中高生時代には俊敏で良い選手だったが、大学、プロとステージが上がる毎に身体が大きくなり俊敏さが失われ怪我がちになり、その時にトレーナーや自分が気付いた身体能力の不足点を一生懸命補おうとします。動きが遅くなったのは単に体重が重くなったからダケではなく、その鎧を自由自在に且つ安全に作動させる技術が追い付いていないからなのです。
競技独自のパワフルで安全で繊細な技術の向上は、筋肉の肥大速度よりどうしても遅くなります。
ならば「今の身体を自由に動かせるようになれば良いのでは」となりますがコレも少しの効果しか産みません。確かに初めての動きは最初難しいのですが訓練し慣れて来れば新しい動きを憶える事が出来ます。以前は出来なかった動きが出来るようになった!と嬉しくなるでしょう。でも残念ながらその技術は単なる付け焼き刃。実際の競技中に役に立つ事は無い上に、身体に無理が生じるので怪我をする可能性が飛躍的に上がります。
例えばここに高校でも大学でも好きなだけ走れたランニングバックが居たとしましょう。プロなり社会人なりのレベルでも最初から「スーパー」な活躍をします。しかしある時に負傷します。手術が必要な程かどうかはさておき「運が悪かった」以外の部分で怪我の原因を探ろうとします。「もう少し○○の部分の筋力をつけてみよう」だとか「股関節の動きがどうこう」とか、「背骨が・・・骨盤が・・・可動域が・・・動体視力が・・・」などと悩むこともあるでしょう。そして色んな人がそれぞれ得意の分野の色んなアドバイスなり助言をします。コレを鵜呑みにし、心酔してのめり込むともう終わりです。
選手としてもう一皮むけて、もう一花咲かせたい。この思いはどんな逆境にも耐えて壁を乗り越えるでしょう。しかし残念ながらこの方法では試合の結果として全盛期の自分を越える事はありません。
何故か?
遅いのです。気付くのが遅いのです。競技を始めた時に伸び盛りの自分に酔い、謙虚な気持ちがどこかに行ってしまっていたのです。練習でも試合でもかなりの活躍をし、まわりからチヤホヤされ勉強無しで好きな学校に進学出来てしまえば「自分に足らない部分」を必死のパッチで補おうとする普通の行為が疎かになってしまったのです。謙虚さが抜けていたのです。上手いのだから結果を出しているのだからそれは当然でしょう。またはアタマが良くないというか、のんびりと構えて何も考えて居なさ過ぎなのです。
コレをビシッと指導というか意識改革、修正してあげる事が出来る大人はそれほど多くは居ません。
いつもチームを勝たせてくれる有頂天なスターの鼻をへし折り、将来彼が目指せるゴール地点を客観的に冷静に見定めて技術が成熟し切ってしまう前にやっておかねばならない「基礎作り」を自チームの目の前の勝利より優先してくれる指導者が何人居ますかね?
上手くなってしまう前に、または上手くなりながら、将来の最高到達地点で必要な体躯やパワー、スピードを見定めて、筋肉も関節も脳みそも柔らかい若年のウチに鍛えまくって身体作りをしておかねばなりません。前述の身体の動かし方を学ぶのも最初の頃からやっておかねばなりません。
今どき60キロのランニングバックでは活躍の場は限られます。高校生だから、今は活躍出来ているから60キロで良い。のではなく、アメリカに挑戦するかもしれないのなら先に90キロ100キロになっておかねば結局残念な思いをするだけです。日本の社会人リーグで活躍したい場合も同じです。何が何でも先に大きく強く、そして身体の使い方の名人になっておく必要があります。
上手くなってしまう前に誰よりも鍛えておく。屈強な身体を用意してから上級者にならなければ「超一流」になれず「一流」で終わります。
良い選手は、足が速い、俊敏、パワフル、クレバー、といった「今の自分のジャンル」で満足している事が多いのでは無いでしょうか。これは決して傲慢なのでは無く単に勉強不足、意識不足なだけしょう。
フットボール以外のスポーツに通ずるかどうかはわかりませんが、上手くなってから鍛えたのでは遅いのです。自称「身体を鍛える事に詳しい」という職業の人もフットボール全てのポジション、全ての局面で必要な事を熟知しているわけではありませんので、局面局面を分割して指導してもらうしか方法はありません。どんな時にどのような塩梅で力を入れて云云かんぬんは結局のところそのポジションの超上級者と本人にしかわかり得ません。ですから疑問点を質問する為にも、自らを鍛える為にも身体の事を勉強するのは毎日のトレーニングと同じぐらい重要です。
いろんなスポーツや運動、武道をして、それぞれの良い所を全て取り入れ、強くて速くて器用で柔軟な身体を作りながら技術と経験を積み重ねるのが理想です。身体を作って行きながら技術の向上を同時に進行する事が出来る環境を自分で作りましょう。
しかし以前もココに書きましたが、ニッポン人とアメリカ人の大きな違いはダントツで技術力です。強い肉体を持ち、子供の頃から最高地点の選手を見て憧れ続け、多くの強敵を相手に経験を積む。若い人ほど身体を鍛えに鍛えて頑張ってもらいたいなと思います。
ファンが待ち焦がれる秋の本番開幕まであと少し。毎日暑いですが選手の皆さんは怪我の無いようにシーズンを迎えて下さい。
