教えている事が出来るようにならなければ教えた事にはならない。問題の答えではなく解き方を詳しく教えて欲しい。出来るようになるまで。
これは僕が選手時代非常に苦しんだ事のひとつです。フットボールにおいては少しでも上達する可能性があれば藁にもすがる思いで雑誌やテレビ、コーチや上級者からの情報を必死で収集していました。運よく後に上級者になれましたので、僕を上達させる事が出来なかった人の指導方法は僕にとって間違いだったと言えるでしょう。
そして現在では立場が変わり、悩める選手諸君に上達のキッカケとなる(筈の)情報を日々送り続けています。ランニングバックとしての基礎基本事項としてタモン式では約20項目の大原則があり、その20項目を遵守出来ていないと現場やVTRミーティングで指導が入ります。僕の指導している選手らはこれを読んで「え?!20しか無いの?!ウソだ!もっといっぱいあるような気がするぞ!」と感じる筈ですが、実はこのくらいの項目数なのです。
簡単に説明しますと、ランプレーでボールを持つ場合は約10項目を駆使し守備の穴を突破します。これはみんな大好きですので熱心に練習します。質問も多く出るのでミーティングの時はそれらしく賑わいます。
そして次にパス関係です。パスをキャッチする場合はそこに行き着くまでのルールが5項目ほどありますので、守備選手に囲まれた状態でのランアフターキャッチ(RAC)はおおよそ5+10で15項目がのしかかり、とても忙しく難しい技術と言えます。そしてもうひとつ地味ですが肝心な技術、パスのプロテクションですがこちらは5項目ですので訓練を積んでコツさえ掴めば国内トップリーグで使う程度であればどなたでも出来流ようになります。
「活躍するための20戒」とでも言いますか、守っていれば上達するメソッドとして用意しています。但し、ランニングバックですので走るのが得意でなければなりませんし、リーグのレベルに応じた負けん気の強さは必須です。運動経験もヤル気もない場合は育成する事が出来ないのは言うまでもありません。
フットボールのオフェンスという競技は、ルールや作戦が複雑で「とにかく思いっきりやる」事がとてもやりにくい構造になっています。逆に「とにかく思いっきりやる」を全てのシーンで実践出来る組織が有利になると言えます。相手の意表を突きたいあまり、チームメート全員が記憶できない量の作戦を配布してくるオフェンスコーディネーターと呼ばれる攻撃の戦術責任者(僕は選手時代この輩らを敵と呼んでいました)がこの「とにかく思いっきりやる」の邪魔をしてきます。
しかしこれも関係者全員が知っている罠ですので、いつまでもそんなのに引っかかっている指導者は淘汰され居なくなっていますし、話し合いで解決する事ですので「攻撃が進まない=作戦が少ない」は違うんだよーと教えてあげましょう。
「とにかく思いっきりやる」には色々あり、ゲームではもちろんですが練習の取り組み方が非常に大切です。思いっきりやると大ミスになる。超のつく空振りに終わる。相手の動きによって作戦が変更される場合興奮してて判断できない。思いっきりやらなあかんに脳が支配されて細かな動きがおろそかになる。などなど「とにかく思いっきりやる」は奥が深く実はとっても難しい戦い方なのです。
先述した20項目のどれにも当てはまると言うか必要なのがこのコラムでよく出てくる「勇気」です。大失敗を恐れない勇気、怪我を恐れない勇気。作戦遂行だけに没頭するとファイト(格闘)する意志が見えない薄っぺらいプレーに終わります。スピードとパワーを敵にぶつけなければいけませんので、歯を食いしばり目ん玉をひん剥いて身体中にチカラを入れなければフルにチカラを発揮できませんが、肩の力を抜いてミッションを冷静に遂行しなければなりませんので、とても難しい競技です。
もう何が何だかわからなくなるほどに複雑な話になってきました。ですから選手時代の僕は表を作って「やろうと思えば出来る事」「それ以外」を分ける作業に取り組みました。
タモン式では「モラル点」「テクニカル点」と分けていて「モラル点」とは気を張って注意しているだけで遂行可能な事。例えば集合(ハドル)には歩かずダッシュする。タックルされたら即起き上がって仲間のことろに戻る。22人の中で最後までプレーする。プレーが終わったら歩かずダッシュで仲間の所に戻る。失敗しても下を向かない。痛くてもすぐに立ってやせ我慢する。などです。
「テクニカル点」は、最高のスピードで密集を駆け抜ける。ボールが破裂するほどの強いチカラで抱える。マバタキすらしない程に目を開けて現実を見て状況把握する。重心を落として強く地面を蹴る。失敗を恐れない。そしてとにかく思いっきりやる。などです。
やろうと思えば出来る「モラル点」はポジション内での規律として厳しく規制しています。頑張るだけで達成可能な目標ですからこの部分では通常の人間ですと常時100点が取れる筈です。ですから癖づけてしまえば体調や敵の強さに関係なく自然に出来るようになります。そこでフットボールに於けるスタンダードが上がります。
そして次の段階になり練習で注力すべきなのは「テクニカル点」の方です。全ての項目で簡単なものはありませんし、マスターすればある程度の活躍は確約されます。100回でなく1000回。場合によっては1万回の反復が必要かもしれませんが、出来るまで諦めなければ出来るようになりますので、選手たちは大変そうですが上達やトップを目指すなら誰もが通らねばならない道ですし、泣きながらでも食らいついてもらっています。
日本チャンピオンを目指して本気で活動するなんて、この先それほど訪れない機会だと思いますので悔いのないように気張ってもらいたいですね。
