僕が所属する電通キャタピラーズの練習後ミーティングでは、どこのチームも同じようなものだと思いますが練習シーンを撮影した動画を見直し、コーチがフィードバックしてみんなで意見を言い合ったりしながら能力を上げたり仲間と息を合わせたりを目指す作業をします。皆んなの熱心さと言いますか、熱量が凄いので僕もエネルギーを出しやすい環境で指導させて貰っています。
フットボールのシーズンは「1ヶ年」で始まりと終わりがくるサイクルで毎年毎年回っています。初心者の存在する学生チームだと最初の1年2年は基礎作りに明け暮れますので社会人とは少し時間の使い方が違いますけどね。
リーグのレベルにフィットした能力を持ち、チームが期待するパフォーマンスを試合で必ず発揮できるだろうという観点から入団を許されているのが社会人チームの選手ですので、ポジションごとの仕事内容やルールもあまり知らないような人は存在しないわけです。
他のポジションはさて置き、僕の担当するランニングバックは運動神経が高く、敏捷性や瞬発力にも優れ、全てのプレーでタックルされ地面に倒されるまで全力で走り続ける体と心のタフさが要求されます。セットプレーのインテリジェンスやリーダーシップは得意でなくてもやっていけます。
しかし電通キャタピラーズは社会人のトップリーグではなく、2番目のディヴィジョンですから上を見ればまだまだ多くのチームや選手が存在しています。そこに向かって追いつき追い越せと頑張りたいと手を挙げて入団してきてくれた「猛者ども」に、試合で活躍するための考え方と練習の仕方、そしてゲームでのプレー方法を時間のある限り指導しています。
チームの内部情報などではありませんし情報管理面で問題ないかと思いますので先日の練習後に選手らにこんな話をしました。
「過去に学んだり経験してきた常識を覆そう」が大きな論点です。電通には大学の低学年時から指導している選手も居ますが、高校時代に染み付いた成功体験がまだ少し残っていたりしますので過去を抜き取るのは中々難しい作業なのだとは僕も既に学び済みです。指導する側にとっても当の本人であっても簡単ではありません。これは色んなコーチの方(大物も含む)も同じようなご意見をお持ちのようで、僕だけのオリジナルな考えではありません。
例えばこんなプレーがありました。ランで右に展開するオープンプレーです。LOSの向こう5ヤード付近には等間隔でランニングバックを追い詰めようとする守備選手が3名、自分を守ってくれる仲間が1名。3対2の状況で少し不利。ボールを持って右に走るランナーはサイドラインの方へ走って行き少しロスした場所で集まってきた守備選手らにあっさり止められてしまいました。
こういったよくある場面での判断では上記のように外側(サイドライン側)に逃げれば1秒か2秒ほど時間を作ることが出来るので、忙しく慌ただしいプレー中に安心する時間が1秒も2秒もも稼げるのでニッポンランニングバックの殆どは外に向かって逃げるのが大好きです。社会人リーグでプレーする前はその方法でも守備の下手さでゲイン出来ていたのでしょう。これはココのコラムで何度も書いていますよね。
そんなランニングバックばっかりなので守備選手もサイドライン方向に逃げようとするランナーを追い詰めて仕留めるのにとっても慣れています。皆んなめっちゃ上手いのです。なのでボールキャリアーが勝つのは味方の超ナイスプレーが無ければ非常に難しいんですね。でもプレー中は必死なので敵の人数が少なく見えてしまうサイドライン側(見る方向がちょうど90度間違っていてそんなとこにそもそも敵は居ませんからね)に向かって逃げてしまう。
コレを変えよう!と指導を繰り返していますが、全身全霊で僕の言うことを信じて練習してくれる選手は次のプレーではアッサリとサイドラインに逃げることを辞めてくれます。しかし大人になっている社会人はなまじっかプレー年数も多ければプレー経験も多いですよね。その分、良いことも悪いこともちゃんと両方のクセをたくさん持っています。
取り囲まれているような気がしたら、とりあえずやみくもに逃げ惑うのではなく、ワンチャン狙ってエンドゾーンに向かって切れ上がってみろ。前方からタックルがいつ誰がどんな風に来るか見えているんだから、もしかしたらタックルが外せるかもしれないだろう?タックルされたとしても味方ベンチが残念な気持ちなるような後ろ向けに倒されるようなロスにはならないし、守備側も今のを外されてたら大きなゲインに繋がった。危ない危ないと、中に切れ上がってくるランプレーを今までよりほんの少し注意を払うでしょう。
そうなれば、愛してやまないサイドラインへの追いかけっこが、ほんの僅かではあっても中へのキレ上がりをチェックしてから始まりまるので勝機があるかもしれないよ。でもまだ「あ、はぁ。でも敵がいっぱい居るじゃないですかー」という返事になります。
そこで「なぜキレ上がらなかったの?」と尋ねると「そこに行くとタックルされると思った」と答えてくれました。タックルされていないのに、タックルされると思わなくて良い。初めてのこと、無理やなと思うこと、やってみる以外に上達などない。今回の例はやってみないと結果がわからないバージョンなので試さないといけません。ましてやランニングバックというスポーツと言いますかポジションはあらゆる世界のスポーツでも類を見ない「敵が複数居る不平等な格闘技」です。
初めてのことや無理やなと思うことを克服するにはとにかくやってみる以外に上達などない!とは言うてますが、失敗したり敗北したりは当然降り掛かります。だって今の君はそれが出来ないんだから仕方ない。練習で失敗してボロボロのヘトヘトになって、事情を知らない他ポジションの選手らから笑われたり叱責されたりもあるでしょう。
でもそれがどうした?ランニングバックをする者として、よく考えましょうよ。練習で挑戦を繰り返し失敗してズッコケるのが本当に恥ずかしい事かい?違うでしょう。
ゲームで君のプレーを観に来たチーム関係者、家族やファンが君の活躍や仕事ブリへの大きな期待を裏切る事が競技スポーツマンとして最も悔しいことじゃないか?その為の努力を怠る事が恥ずべき事じゃないか?今回の事例であれば「単なる間違った思い込み」で自分の成長を阻んでるしね。
考え方を正しい方向に修正して実行してみれば今まで見えなかった景色が見えるんですよ!
タモンズスタイル21aug2022
