多聞コラムVol,269 ゴフがセットバック

ゴフがセットバック

さて、ようやく待ちに待ったNFLのシーズンが始まりましたね。ここ数年は年がら年中休みなしで毎日コーチをしていたのでNFLを見る時間が全く作れませんでした。日本のシーズンが終わる12月ごろからのプレーオフだけをこれまでの経過もわからずに寂しく眺めるだけだったのですが、今年は社会人チームだけしか関わっておりませんので実働は土日のみですから「プレシーズン第1週」を久々にじっくり観られました。プレシーズンの16試合をぜーんぶ観ました。名前もわからない選手ばかりになってしまっていますが、ちゃんと楽しめましたよ。いつからか、プレシーズンゲームは1チームあたり4試合だったのが3試合に減ってしまってるんですね。

16ゲームで32チームを見た結果、感じたことがあります。全チームがセットバックを使用しているという事です。多くのチームがセットバックを使っているのは認識していたのですが。ショットガンとの併用ではありますが、時代が巡りランプレーが重視される時代に戻ってきたのかなと嬉しく感じました。

これまでNFLの流行は必ず数年後に日本にも伝わってきました。能力的に真似することが不可能に近いこと以外はたいてい輸入されてきて運用されていますもんね。つまり!やがて日本にもランプレーを重視し利用頻度の高いチームがどんどん出てくるのでしょう。楽しみです!

ただし、ここ約10年ほどで日本のフットボールはショットガン&ショットガン&パス&パスばかりをやってきていますので、高校生や大学生の若年層の選手らがパスのフットボールしか出来ない事態になってきています。NFLの選手でも「彼はドラフト1巡だが大学時代にセンターからのスナップを受けた事がない」なんて事がドキュメンタリーで放送された事で、ああそれで良いんだと日本のパス大好き派は安心していたことでしょう。

パスばっかりになってしまった日本フットボールは、今後NFLの影響も受けてランプレーも増えていく事でしょう。しかし、アメリカ人とは違いそもそも子供時代からやって慣れ親しんでるわけではない競技です。流行が来たからといってスグに適応できる組織や選手はそれほど多くないと予想できます。

ランプレーは激突を繰り返しますし、少ないゲインしか得られない事が多いですから体力的にも精神的にも非常にタフです。ボールキャリアーもラインマンも同じように消耗します。痩せっぽちのイケメン選手が誰にも接触しないようにのらりくらりヒラヒラと逃げ回っていればどうにかなるパスのフットボールと全く違います。

このコラムで何度も言っていますが、ショットガンでスナップされるボールのコントロールが定まっていない場合精度の高いランプレーは全然成立しないんです。それでもショットガンからのランプレーを使う理由は何なのか?

セットバックを経験したり正しく習ったことの無いQBが多く、スナップを受けてからドロップしたりRBにボールを渡すために素早く下がったりが殆ど全員出来ないのです。野球で言えばピッチャーとキャッチャーとバッターの仕事と責任をまとめて1人で背負ってるようなのがQBという花形ポジションです。こんな肝腎要の選手がマトモに動けないような作戦を使えるはずはありません。そして長い年月、セットバックを使っていない為に指導する側も経験と知識が足らず正しい事を教える事が出来なくなってきているのも大きな問題です。

教えられないから選手は出来るようにならない。それでも熱心に取り組む選手たちは良かれと思い教えられた事を反復し自分なりに解釈。それがだんだん正しいアメリカンフットボールから外れていき、その間違った方向に変形したノウハウを後進に伝えイビツな伝統が構築されている。のが現在の日本フットボールがアメリカに年々引き離されている大きな理由のひとつなのでしょう。

いざ試合で選手が自信を持って出来る作戦を使うのが定石ですからね。コーチも選手も不安なままで試合に行くような人は居ませんし、アメリカとは違っていようが自分らが集中出来てやりやすい方法で試合したいもんですもんね。

だからと言って、以前の日本のセットバックがアメリカのそれと同じだったのかと言えばもちろんそんはワケはありません。甲子園ボウルやライスボウルに出てくる特別に強いチームはキッチリとしていることもありましたが、アメリカ人QBの動きとはずいぶんと差があります。

前出のドラフト1巡QBに関してはパスで好成績を残すも今年度から移籍。ファーストプレーは大学時代に経験のないと言われていたセットバックからでしたが、ハンドオフやパスを投げるまでの動きに関しては素晴らしかったように感じました。さすが高給取りの超一流プロ選手ですね。あっさりとマスターしているじゃないですか。そしてそんな彼をちゃんと指導して仕上げてくるNFLの底力を感じました。

スナップのズレがあり、ランプレーのタイミングを打ち合わせ通りに遂行しづらいショットガンからしかボールをもらったことのないランニングバックらも、近い将来に素早いタイミングの精密なランプレーをやれと命じられてももう出来なくなっている事でしょう。ラインマンらも、どこをどんなタイミングで走ってくるのかが決まっているプレーに慣れていないので、結局は何が正解かイマイチわからないままでプレーすることになり、また壱からのノウハウ構築になるのでしょうか。

良いラインマンが居て、良い作戦を出すコーチが居て、良い指導をする人が居て、良いQBが居てこそランニングバックが暴れられるんです。そして良いオフェンスが組み上がり、その強力なオフェンスを相手にハードな練習をするディフェンスが強くなり、やがては強いチームが出来上がる。という算段ですね。

ランストップが苦手な守備が多い今の時代ですから、早いうちにランプレーが強く巧くなったらパスも面白いように通るようになりまっせ。はやく日本でもそういうフットボールを見られる日が来ないもんかなー。と思いながらコロナ感染者が激増する東京で、客足激減のお店でコレを書いている中村多聞でした。最後までお読みいただきありがとうございました。

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