多聞コラム3oct2017_vol,181「タモン式教本16」いついかなる時も全力で

 47NEWS「週刊TURNOVER」にこのコラムを始めさせて頂いて4年が経過しました。合間が出来たこともありましたがおおよそ毎週1話ずつ「TAMON’S COLUMN=僕の考え」をつらつらと書かせて頂いております。当初は自称フットボール評論家で耳に入ったことや目に付いたことを取り上げたり、僕が体験して来たフットボールの昔話を交えたりして文字にして参りました。そして最近はコーチとして現場に戻り、時にはチームの中から見たことを書いています。

そして!2017シーズン初、コーチタモン早稲田ビッグベアーズ公式戦のサイドラインに立つ!がかないました。場所は江東区夢の島陸上競技場。関西人の僕はこの会場を全く知りませんでした。都会の便利な場所にあって天然芝のキレイなスタジアムでした。観客席が片側にしかないので応援が少し変になっていましたが、学生フットボールはブラスバンドなんかが来ていたりして、校歌や応援歌?を合唱する雰囲気、僕にはとても新鮮な時間でした。

相手はあの元京都大学ギャングスターズ監督の水野彌一さん率いる立教大学ラッシャーズです。僕は攻撃側のコーチですので立教大の守備は事前にビデオ映像で確認しているのですが、攻撃側は一切見ておりませんでした。攻撃権を先に取った立教大学は僕らが大学生の頃から慣れ親しんだ2人のランニングバックと2人のレシーバーという非常にベーシックなアイフォーメーションも使いながら今じゃ完全に時代遅れな攻撃方法で攻めて来ました。しかし、フォーメーションの種類が少なくプレーも複雑なものを多用せず、おそらく練習の精度が非常に高められており目を閉じていても遂行できる程に完成されているのかして、テンポよく息の合ったプレーで早稲田陣にグイグイと侵攻して来ます。パスを3回、ランを6回したところで40ヤードほどの前進です。あと少しでフィールドゴールを蹴られる場所まで到達しそうな3rdダウン1ヤードで痛恨のフォルススタートの反則を犯してしまいそのあとのパスが失敗。やむなくパントとなりました。

このファーストシリーズは結果として40ヤードの前進だけに留まりましたが、僕の目から見ると結局フットボールはこういう事が大切なんだなと改めて考えさせられました。

何度も何度も同じプレーを練習して皆が不安なく動けるようになるまで反復する。その中で選手は全力でファイトする。強く動き激しくヒットする。相手が地面にめり込むような強いタックルやブロック。大きな激突音が会場に響き渡る。それがあってから、スタンドの上から戦況を冷静に観察して分析、最高のタイミングで最高の作戦を指示。フィールド上の選手全員が見事に最高のパワーとスピードを出しながら熱い闘志と冷静な平常心のバランスを取り、すばらしいパフォーマンスを発揮、その繰り返しがゲームの勝敗を分ける。

ですが日本のチームは学生も社会人も選手をはじめ、チーム関係者は生活のためではなく殆どの人が好きでやっています。釣りが趣味でも釣りたくない魚を狙う人が居ないのと同じで「自分がこうやりたい」をかなえるべきですしかなえたいでしょう。そこで流行のプレーなどに目が行くのは当然です。真剣勝負ですから「何をすれば必ず勝つ」というモノもありませんので皆さんが毎年毎年が試行錯誤のチャレンジ続きになる事は言うまでもありません。

ただし、どんな戦略や戦術、チームフィロソフィーがあろうとも、ライスボウル制覇を目指しているチームの選手ならば絶対に守らねばならないことがあります。

当たり前のことばかりですが、ライスボウルが最も重要なものと設定し、練習の全てを全力でやり、ゲームも全力でやる。日頃のハードワークも当然です。練習は怪我しないように軽くやって作戦だけはなるべく間違えないでね。やれる範囲でそれぞれある程度頑張ろう。なんて方針を掲げているチームはチャンピオンになれないでしょう。

フットボールをプレーしたりコーチしたりと言うのは、作戦の優劣と指先の操作だけを競い合うテレビゲームではありません。プレーヤーは自分の出来る事を毎プレー毎プレーで精神集中してフルパワーを使い切らねばならないのです。心肺機能の限界を超え、怪我や脳しんとうの恐怖に打ち克つ精神力、人間ですからフルパワーで走ったり敵にぶつかったりを何十回も繰り返すことなど出来ません。が、それをやっているのが米国のプロフットボールリーグなのです。超人的な体力と言うのは筋肉量や持久力のことだけじゃありません。もうダメだとなっても体のどこかに貯めてあったエネルギーを振り絞って、怖がらずに全てを賭けて敵に突進し続けるのです。

その上辺だけを見て、片手キャッチや作戦だけ真似していても本物には近づけません。僕はコーチとしては全くもって未熟ですし戦術面でのアドバイスや提案は苦手です。ただし「戦いの準備とは」については独自に長く研究して来て居ますのでその部分を選手たちに伝えています。細かい技術は安定した心があってこそ強烈な武器として敵を倒すことが出来ます。心が乱れ、技術が発揮できない状況で最高の作戦があってもうまく行き続けるとは思えません。

「ゲームで良いパフォーマンスを発揮したければ練習時間をいかに過ごすかにかかっている説」はこれまでこのコラムで何度も書いて居ます。タモン式ランニングバック養成所の理念のひとつでもある「何をやるかではない どうやるかだ」に集約されていますが、通常のチーム練習はただこなすだけなら軽いものです。しかし僕がアメリカで見たプロ選手の練習への取り組みは僕の持っていた既成の概念を丸っ切り覆しました。

どんな小さなドリルでも、全てのプレーでフルに全力で動くのです。気温が一桁のような寒い日で練習前は「寒い寒いこんなんで練習するのイヤイヤ」と愚痴をこぼしていたような選手も、夏の日のような汗だくになり、時には大声で叫びながらプレーします。2時間ほどのチーム練習はプレー数も大して多くありませんが練習が終われば皆ぐったりです。プロのアメリカ人こそド根性で練習に取り組んでいるのです。

今日上手くいかなかったプレーやテクニックをもう少し居残りして練習しよう。走り込みをしよう。と言うような事は非常に稀で、皆エネルギーの残存量がゼロの状態です。そりゃあそうでしょう。あれだけ必死に2時間動き回れば。

プロのチームは人数がギリギリに設定してある(約50人)ので予備の選手というのがあまり存在しません。ですから今日はあんまり練習してないという選手はほぼ居ないという特性もありますが、これでこそ練習のあるべき姿だと思います。

まずは練習のやり方をNFLに向けて、いついかなる時も全力で動けるプレーヤーになりましょう。次の練習からは貧血で倒れるほどに全力投球してみては如何でしょう。世界が変わります。

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