多聞コラム19apr2017_vol,163「ゴリゴリ多聞、自伝を語る72」チャレンジャーズ7

 11月の初旬にレギュラーシーズンをブロック優勝で終え、関東の強豪チームと対戦するプレーオフに向けてトレーニングを強化しなければなりませんが、次年度のNFLヨーロッパトライアウト用にも役に立つ「タモン式ランニングバック必勝カリキュラム」を考えていた期間に何やら英語で書かれた、国からの数万円の請求書と小包が届きました。当時のサラリーマン時代に手取り13万円程度だった僕の収入に対してはあまりにも高すぎる金額です。英和辞典で調べるとどうやら「関税」となっています。関税とは外国で高額なものを買って日本に持ち帰った時にかかる税金ですが、貧しい僕は外国で高い買い物などしていません。

開封してみるとなんとそれは6月にフランクフルトで開催され、見事我々ラインファイヤーが勝利した記念品の「ワールドボウル優勝リング」だったのです。「NAKAMURA」「21」と名前と背番号もバッチリ刻印されています。成績の8勝3敗、チーム名などが刻まれズッシリと重い、見事なモノです。ただ問題はこのリングを獲得する為に僕自身がなんの役にも立っていなかったと言う事です。少なからず貢献はしましたが「僕でなくてはならない」というプレミアムが一切ありません。同程度の実力の人であれば誰でも良かったわけです。これは「オキュペーション(職業):アスリート」と各国のイミグレーションで申告していた者にとっては非常に残念な事です。リングを貰えた事に関しては東洋の大学出身選手としては僕が世界で初めてですし、純粋に喜んでいるのですが本当の心の奥ではあまり嬉しくありません。選手としてはやっぱり自分がしっかり活躍したおかげでチームが勝利した!方が気持ちいいのは言うまでもありません。

このリングを手に入れたことによって「日本で自分がしっかり活躍して社会人ナンバーワンになる」がより明確に自分の中で目標ではなく、自分との契約に変化しました。この頃の僕と言いますか多くの社会人選手はライスボウルを目指すと言うより社会人ナンバーワンにしか関心が無いのが標準的でライスボウルはお飾りでありあくまでもお祭り。と言う位置付けでした。ですから強烈な思いで目指しているものは社会人ナンバーワンの座なのです。後にライスボウルに勝利する経験もするのですが、世間的には圧倒的に「ライスボウル優勝」の方が価値が高いと知ることになったのではありますが。。。

ブロック優勝、ワールドボウルリング、第2子誕生、僕のピースがどんどん揃って来ています。でもまだ自家用車は9万円で買った中古車です。何しろお金が無い毎日を過ごして居ました。そして以前から虎視眈々と狙っていた「BAR」の開店が現実のものとなったのです。このコラムでも以前何度か登場した大学の同期「宮ちゃん」は既に起業して成功を収めていたのでこのバーに大金を出資、僕は運営と集客+什器備品の用意を担当すると言うことで「共同経営スタイル」でスタートしました。大阪梅田駅から遠く離れた雑居ビルの5階。スナックの居抜きスペースでキャパは12名のカウンター席のみ。これが渋谷区のタモンズバー東京に次ぐ「タモンズバー大阪」です。同フロアには強烈な店が他に2軒ありました。昼過ぎから超盛り上がっているカラオケスナックと、ふんどし一丁がユニフォームの畳敷きバー。そしてフットボール関係者しか来る事のない「タモンズバー」。悪い立地で飲食店が生き残るには「忘れられない何かを持つトンがった店」である。という専門誌の説も腑に落ちます。

グランドとユニフォームの貸与サポートを受け、アサヒ飲料でプレーしていますので利用するビールはもちろん気を使ってA社のビールとなります。チーム関係者にはいくらでもA社の人が居ますので「今度バーをすることになりましたので、生ビールを注文したい」とお願いし、開店日(リーグ最終戦と同じ日)に機材の設置とビール樽の納品を約束したのですが、予定の時間を過ぎても納品の気配がありません。問い合わせても日曜日ですので連絡が付きません。止むを得ず近所の酒屋でA社の缶ビールを買い、初日をやり過ごしました。メニューには「生ビール中」や「大」などと書かれているので試合日だったとはいえ準備不足が露呈し非常にバツの悪い時間だったことを思い出します。週明けに担当者から連絡が来るも一切の謝罪もないどころか「小さな店で大した量を売るわけでも無いクセにゴチャゴチャ言うなよ」みたいな事を言われて気分を害したのですが、自分もA社の関係者である以上このような態度の担当営業マンでも喧嘩するわけにいきません。前途多難です。

そして週の半ばに機材の搬入と設置がありました。店内には開店祝いの花がアサヒ飲料のとても偉い人からも届いており、それを見た例の態度の悪い営業マンの声が裏返って「ドドドどうしてこの方からお花が??」と聞いてきたので「僕はアサヒ飲料でアメフトしているので毎週グランドで会う人です。開店の時も来てくださってアナタの素晴らしい仕事ぶりは報告させて頂きました。」と説明するとこの営業マンの態度が一変。マトモで普通の営業マンに変身し、敬語を使う丁寧な対応で仕事を終えて帰って行きました。

この事件が僕にとってとてもイヤな思い出となりこの後にすぐA社のビール取り扱いをやめる事にしました。オープン初日にメーン商材の生ビールが原因不明で欠品。これはいつまで経ってもインケツな話として僕の脳みそに刻み込まれ他のでした。

アスリート、バー経営、サラリーマン、父親、としての顔を持ってこの先の人生に向かっていく僕でした。

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