多聞コラム 5oct2016_vol,144 フットボールは勇気を競う競技である

 法政大学の新監督安田氏が「フットボールは勇気を競う競技である」と最新のコラムに書かれていました。僕も正にその通りだと思っています。試合や練習でのあらゆる局面で勇気はとても重要です。

失敗するかもしれないという時に「構うもんか!やってやれ!」と全力で臨むことは簡単ではありません。弱気になった心を操作する事は本当に難しいものです。性格的に失敗をそれほど気にせずドーンと出来る人も中にはいらっしゃいます。小心者の僕はそういう人を本当に羨ましく思っていました。

以前このコラムでも心の迷いや不安、雑念がいいプレーを生まない。というような事を書きましたが、やはり心の在り方は非常に重要です。このところしょっちゅうコーチングでグランドに立っていますが、ギャーギャー大声を出しながら色んなポジションの選手を客観的に冷静に観察しています。平常心でリラックスし、プレッシャーが無い時には簡単に成功する技でも、シチュエーションが決められピンチを想定した練習では失敗を恐れてミスをする。もちろん試合でも期待通り失敗します。ギリギリまで己に挑戦したミスではなく、失敗を恐れ逃げ腰で臨んだ結果のミス。これは「勇気」が足りないわけです。ノジマ相模原ライズ用語で言う「メンタルエラー」です。勇気を出し渋った選手は、そのプレーの失敗は反省するが勇気の出し渋りには注目せずまた同じことを繰り返します。勇気を出す訓練が必要なことに気づかぬまま真面目に熱心に技の練習に明け暮れ大切な局面ではいつも失敗。その結果コーチや仲間からの信頼を失い出場の機会が段々と失われていく−−。よくある話です。

僕自身も選手時代、自分の実力がリーグのレベルに達した時には勇気が無限に湧き出てどんどん挑戦した良いプレーが出来るのですが、また一段上のレベルに上がると失敗やミスを恐れて腰が引けてしまうという繰り返しでした。思いっきりの良さが自分の武器なのに腰が引けていては実力が上の人と対戦しても敵いっこありません。コーチの考えた作戦を覚え間違っていないだろうか?自分の役割はコレで合っているのだろうか?そんな事を迷っていてはハードで確実なプレーなど絶対できません。

僕の場合はNFLヨーロッパ時代、キックオフカバーで色んな恐怖や迷いから抜け出すことが出来ました。直線を走るスピードにはアメリカ人と比べても自信がありましたし、体重も100キロオーバーですから威力がつけばアメリカ人も怖くない!と勝手に勘違いをしていました。当時は常に重心が高く、強い走りというものを理解できていなかったのに自分の不完全さを認識せずに自信満々でウェッジバスターを率先してプレーしていました。重心が高く視野が狭いので横からアメリカ人にハードヒットされるとかなり吹っ飛ばされたりもしました。しかし何故かこのキックオフカバーだけは心が折れたりビビったりする事なく毎試合毎プレーフルスピードで突っ込みまくれたのです。

相手はドラフトでNFLに就職したがベンチ入りが叶わず仕方なくマイナーリーグで修行し、本国のメジャーリーグへの復活を目論む猛者ばかりです。彼らも本気の本気ですからキッキングで日本人のホケツ野郎に負けるわけに行かなかったでしょう。僕のプレーが上手く行った次節はマークが厳しくなったりしました。しかしこの凄いスピードで突き抜けながら広い視野を確保し、可能な限り重心を低くしてリターナーの手前に居る大きな身体の「ウェッジら」に突き刺さるまでノンブレーキで突っ込むという実践練習が、ランニングバックとしてスクリメージで走る訓練になったことは言うまでもありません。スクリメージ上のスピードはキッキングに比べると非常にスローです。ただしキッキングのような勢いに任せたマグレは絶対に起こりませんが。

自分だってNFL級の連中に対して戦える土俵がある。ただし実力では圧倒されるので、スピードと根性(勇気)をフルに満タンでプレーしなければ大ケガをさせられる可能性もあります。少しでもビビって減速したら僕の存在価値は無くなります。そして「あ、この気持ちでランニングバックの時もやらなきゃダメなんだ」と気づくのです。

それからは毎日の練習でどんな小さなドリルも、ハンドオフ練習も、もちろんスクリメージ練習も、気持ちを試合以上のモードに切り替えて臨めるようになったのです。

最初の話に戻りますと、いかに勇気が重要か。失敗などのネガティブな事を連想したとてそんなことに惑わされず全力で戦わねばダメなんだ。としっかり切り替えが出来るようになった時、僕はあらゆるゲームで自分の実力を完全に出すことが出来るようになりました。緊張していても、興奮していても、病気でも怪我でも全く関係なくチカラを出し切れるようになったのです。

リラックスした状態で出来ることが、別の局面になると出来なくなる。この誤差が小さくなればなるほどチームの役に立つ「いい選手」になります。元々の実力など同じリーグ内ならそれほど変わりません。そのゲームやそのプレーでいかにフルパワーでいつも通りに動けるか。練習では出来るけど試合じゃ失敗する事が1つでもある選手は、もう一度自身を振り返り心の安定度をチェックしてみてはいかがでしょうか。集中していましたか?失敗を恐れていませんか?自信満々ですか?他に雑念はありませんか?

シーズンは中盤戦。思いっきりの良いプレーで自分に挑戦してくださいね!集中していると怪我も少ないですよ!

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