多聞コラム1sep2016_vol,141 絶対に全力でプレーする

 秋のシーズンが始まり、チーム内の緊張感が高まってきました。そしてよくこんな質問をされます。「タモンさん、日本一になるには僕らはあと何が足りませんか?」です。選手たちは自身の選手としての価値を向上させる事に貪欲で、少しでも為になる、意味がある、と感じた事には努力を惜しまない習性を持っています。ポッと出てきた僕のような者からも「何か良い情報がないだろうか?」と収集の努力を惜しみません。

僕は優勝請負人でも何でもなく、ランニングバックの基礎を立て直し、試合を支配出来るようになる為のお手伝いをしているので優勝の仕方に詳しいわけではありません。

でも取り組みの甘い3部リーグの大学で苦汁を味わうところから始まった僕のフットボール経験で見てきた幾つかの組織で、たくさんの事を学んだのは言うまでもありません。アサヒ飲料では、色々な背景と現場がガッチリ噛み合い選手のポテンシャルがリーグ内でも高く評価されていなかったにもかかわらずライスボウル優勝しています。そして翌年はチーム力が上がっていたのにライスボウルで油断し学生さんに足をすくわれました。

三武ペガサスでは素晴らしい能力とハートを持った選手が集まってはいましたが60人のチームと戦うにはコーチやコーディネーター無しで選手18人じゃどうしようもありませんでした。サンスターでは最高の環境と金銭的なバックアップが充実。選手層も申し分なし。しかしチーム運営の未熟さと選手らの取り組みの甘さで日の目を見ることはありませんでした。

優勝する為に必要なのは「少しでも多くのお金」です。それ以外ありません。最高の環境で最高の選手を集めて最高のコーチ陣を擁し最高の練習を行う。でもそんなことは誰でもわかっていますし、お金は急に湧いてきません。では僕に答えてもらいたい事は何でしょう? 練習の方法や時間の使い方、トレーニングや栄養の考え方、と言った今すぐにでも変更できる事ですね。

中でも練習への取り組み方、練習のやり方、が重要だと感じているようです。でも学生時代はチーム方針のもと、一心不乱に与えられたメユーをこなして来た。そして社会人チームに入ると練習がのんびりしている。でもこれが社会人なのかー。と勘違いしていくのが普通です。しかし現状に甘んじず向上心の高い人は「これで良いわけない!」と気づいているのです。でもどうすればいいのか?!も殆ど気づいているのですが、自分の考えや意見が正しいんだ!という確証を得て自信を持って改革に邁進したいのだと思います。

僕は練習とミーティングの方法にかなりのこだわりがあります。練習時間を1秒たりとも無駄に使いたくない病の患者なのです。せっかく全員が一つの場所に集まってフットボールの練習をするならば、最大の効果を生みたいのです。でもどうしても練習って暑かったりしんどかったり寒かったり痛かったりと、雑念と誘惑が入り混じっています。気の合う友達とお喋りするのもとても楽しいものですが怠けていると日本一への道は消えてしまいます。

まず、絶対に全力でプレーする。一切手抜きしない。全身全霊で集中してプレーする。これを徹底します。少しぐらい上手くても全力じゃない奴など全く怖くありません。また、少しぐらい下手でも全力で目ん玉開いて親の仇とかかってくる奴は厄介です。こんなこと、わかりきっています。でも練習時間の全てで「全力」ってとても難しいのですね。これをガッチガチに監視します。フットボールはほんの5秒ほどでひと区切りのスポーツですので、この5秒間さえ集中して全力で暴れれば良いだけなのです。が、甘やかされた環境でプレーしてきた甘ちゃんは70%くらいでこなしてしまうのです。これが腐ったみかん。ほんの少し手を抜いても誰にも見つかりません。誰からも指摘を受けません。上級者であれば尚更、少しくらい手抜きしても相手には勝っちゃいます。これでおかしな世界に入り込みます。楽な道は麻薬と同じで簡単には抜け出られません。

この腐ったみかん現象がチーム内に蔓延し、口じゃいくらでも「やったるで!」「日本一や!」「今日もやるで!」「サー行こう!」と叫んでも自分自身に嘘をついている弱虫は結局最後まで本気を出せずに試合に負けて引退します。そして会社で「俺は日本代表クラスの選手だった」とか言うのです。

アサヒ飲料時代のヘッドコーチがとても怖い存在でした。怒鳴られたり殴られたりするワケではありません。それどころか一切の指導もされません。全てを見透かしたような眼で見ているだけなのです。でも怖くて怖くて必死で練習しました。何が怖かったのか? 信頼を無くすのが怖かったのです。必ずゲインする。怪我しない。皆を鼓舞する。期待されている事は分かっていましたが「必ずゲインしろよ」「怪我するなよ」「皆を元気付けろよ」など言われたことなどありません。しかし無言の期待が重責で、少しの事で弾けてしまいそうな緊張感でした。この期待に応えるというスリルがこの後の僕のフットボールには無くなってしまい、つまんなくなっていきました。

少し話がズレましたが、今は偉そうに言っている僕もこうやって「コーチの目」を練習の間ずっと気にしてビクビク怯えていたから集中した練習がどうにか出来たのです。「超集中した5秒間」を何十回も練習でやり抜くには1人では無理なのです。コーチなり、先輩なり、仲間なり、「確かな眼」を持った人がしっかりと選手を見ること。コレがとても重要なのではないかなと思います。

今のプレーはもう少し右に行けば良かったんじゃないか?というアドバイスすることだけがコーチの仕事ではありません。その選手がアクセル全開だったかどうかをじーーーっと見てあげないと。と何度も自分に言い聞かせて今週も相模原ライズ&早稲田大学の練習に参加してきます。

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