多聞コラム21apr2016_vol,128「ゴリゴリ多聞、自伝を語る59」グリーンベイその5

 午前の練習が終わり、シャワーを浴びます。この時1998年。1980年台半ば僕がヤングな中高生だった頃、日本に登場した液体石鹸ビオレUは女性用の柔らかい香りでした。なんの話かと言うと、パッカーズのシャワールームに設置してある液体石鹸がとってもいい匂いだったという話なのです。これは明らかに男性用の匂い。日本では感じた記憶がありません。それ以来ずーっと思い出の中に格納されていたのですが先日の僕の誕生日、沖縄の友人に頂いて思い出しました。コレですコレ。この香りを嗅ぐと18年前のランボーフィールドでの出来事が昨日のように思い出されるのです。1日に2度の練習ですから最低でも2度はシャワーを浴びます。その都度嗅いだこの香り。イヤー懐かしい。たまたま当時のことをこのコラムに書いているタイミングで、素晴らしい!外国人御用達のスーパーマーケットが僕の西麻布のお店の近所にあるのですがこの液体石鹸の値段を見てびっくりです。勿体ないのでちょっとずつしか使ってません。仕事を終えて部屋に帰ってきてこの石鹸で体を洗って当時を思い出しながらコレを書いています。

このコラムを書かせて頂き始めて2年が過ぎましたが、友人でない方から「いつもコラム読んでるで」というご意見をあまり頂いた事がなかったのですが、これを書いているタイミングで「いつも週刊TURNOVERのコラム、楽しく読ませていただいております。多聞さんの他者とは異なる視点やご意見、ご行動に、自分も。。。。」というとってもとっても嬉しいファンレターを頂戴しました。こうやって読んでくださっている方がいらっしゃる事がわかると張り切ってしまいます。いつもは根性だヤル気だと良いカッコばっかり言っておりますが、結局僕も「褒めなきゃ伸びない」一面を持っているんだと再認識しました。

ではランボーフィールド1998夏に戻ります。午前の練習で打ちひしがれ、次に僕が取った行動は。そうです。NFL入団など絶対に無理。自分の能力や自分が出来る事は自分が一番よく知っています。キッパリ諦めて勝負や挑戦など考えず思い出作り(+お勉強)に精を出す。これしか無い!と気持ちを切り替えるのです。

前年度スーパーボウル出場チームの内部に潜入し可能な限りの情報収集をして帰国後のエックスリーグでいかに活躍するか。に焦点を絞り込んだのです。

ランボーフィールドや関係各所周辺の設備、チーム関係者の仕事ぶりに役割や序列、そしてメインは何と言っても選手やコーチを観察しまくるのです。この時の約80名の選手の中にはドラフト外入団のヘタクソも居れば、ドラフト1位で入団しプロボウルやオールプロ選出のスーパースターも居ます。なんでもネットで検索してしまえば一瞬で情報が得られる時代ではありませんし、日本語で書かれた選手名鑑も手元にありません。当時の僕は自分のことが精一杯でここ3年ほどNFLを見ていませんでしたので予備知識がありません。レジーホワイトがフィラデルフィアから移籍していてブレットファーブがエースって事しか知らなかったのです。エースランニングバックが誰(ドーシーレベンスでした)なのかも知りません。ですからどの選手が超一流で、どの選手が二流なのかは僕が見て感じて判断しなければなりません。ヘタクソを凝視して貴重な時間を無駄にすることは出来ません。

ユニフォームまで着せてもらって、前年度スーパーボウル出場チームに潜入捜査が出来るなどもちろん日本初の大事件でしょう。つまりどんな日本の名コーチでも知り得ないネタを自分が初めて見たり感じたり出来るわけです。そんなスペシャルスーパーチャンスタイムに「勝負」や「挑戦」などと無謀なことをしていて視野を狭めては大損すること間違いなしです。

まず、午後の練習に持ち込んだ物は「ビデオカメラ」と「カメラ」です。機械物が好きで、10代の頃からカメラやビデオを持って遊ぶのが趣味でした。ですからNFLヨーロッパのツアーにも持って行っていましたし、もちろん今回も持ってきています。現在と違い録画はテープで電池も長く持ちません。バッテリーの消耗とテープの残量との勝負が始まりました。ビデオカメラを持ってる人が非常に少ない時代ですし練習場にそんなものを持ってくる不謹慎な選手など存在するハズがありませんから、パッカーズ側も特に禁止ルールもなく、自由にミーティングから練習から全部撮りまくれました。

特に用事もありませんし、早々に練習着に着替えてロッカールームを出ます。午前と同じでファンがそこら中にウヨウヨ居ます。幼稚園児くらいの子供さんが片っ端から寄ってきて「プリーズ、ボクのシャツにサインしてよ」と言われます。集まってきた人全部にサインして少し進むとまた人だかりに巻き込まれます。ここでもまた全員にサインして開放。また少し進んでと同じことの繰り返しです。練習開始まで1時間以上あるので僕は余裕たっぷりです。ファンの人と雑談したり写真を撮ってもらったりして練習場に進みます。少年のBMXをスパイクで漕ぐのはコツが要りますが、パッカーズの選手というかNFL選手としてファンにサインするなどという機会が今後もあるとは思えません。徹底的にファンの要望に応えます。グローブくれとか、ヘルメットくれとかは無理ですが、基本はサインと写真撮影を求められます。快く笑顔で応対、「thank youは日本語でARIGATOだよ」などと日本語を教えたりして楽しく交流しました。

そして午後の練習が終わり、日テレの取材で久々の日本語でインタビューです。どうですか練習を終えて。さっきもサインとかしておられましたねー!と聞かれて「僕らは毎日の事ですが、ファンの方々は今日しか来れない人も居ると思うんです。子供達も夏休みとはいえ今日しか連れて来てもらえないかもしれないじゃないですか。そんな貴重な日に僕のような選手にサインを求めて下さるのに、時間がないとか練習に集中したいからとか思っちゃダメでしょう。パッカーズの練習をお父さんと観に行った事をいつか思い出された時に、感じよくサインして写真も撮ってくれた選手が居たなーってならないと。NFLから給料をもらって渡航費ももらってココに来ているのですし、パッカーズに戦力で貢献出来るわけ無いですからファンの皆さんに少しでも喜んで頂かないとって思うんですよ」と語っています。「目指せマスコミとファンサービス世界一のアスリート」を徹底しながらパッカーズサマーキャンプDAY1が終わろうとしています。

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