多聞コラム6aug2015_vol,105 日本のフットボールはどこに向かっていくのか

 7月の世界選手権に於いて日本代表がアマチュアレベルの米国代表に歯が立たず、これから日本のフットボールはどこに向かい、何を目標にすべきなのか?と考えてしまいました。大きく分けて2方向が考えられると思います。1つは打倒米国プロフットボールリーグ(NFL)。もうひとつはオリジナルの独自路線。

現在の在り方や取り組みがこの打倒NFL路線だと思われます。本場米国に留学したりクリニックなどに参加したり、最新の情報を確保。そして自チームへ還元。ルールも米国の大学に準じ、ルール改正などがあれば素早く日本で実行されています。しかし残念ながら現在まで、日本国内の大学生がNFLのドラフトに呼ばれた事はありません。米国内に暮らす日系人の子孫などが稀に登場しているだけです。ではどうすれば国内の大学生日本人選手がNFLのドラフトに何名も名を連ねる事が出来るのか?

ドラフト外のテスト生などで入団し、後に才能が開花しスターに。そして歴史に名を残すほどの大選手になる。というのはどのプロスポーツでも滅多に起こりえません。NFLも商売ですので、アメリカ中で才能のありそうな若者を競技関係なく探し続けています。ですから才能のある人がその網の目に引っかからない事の方が難しいわけです。90年代後半から10年間ほど、日本市場にも目を向けた事もあありました。しかし当時のトップ選手らがそのメガネにかなう事はありませんでした。

ピラミッドの底辺を支える小学生、中学生、高校生の選手やチームが著しく少ない事で門戸が狭い上に「危険なイメージ」「お金がかかりそう」などのマイナス要因を現在の日本から払拭する事は不可能。

特別優れた選手が出てきたとしてもそれをNFLまで押し上げるノウハウを持つ低年齢層を受け持つ指導者は極めて少なく、早くて強くて利口で器用なので便利に酷使され下手をすれば怪我で引退。チーム事情で不向きなポジションを任され大成しない。これはよくある例です。

低年齢層の指導者は学校教育の範囲で指導するのが普通なので、無理はありません。仲良くスポーツを楽しむ事が最優先。

そして大学に入ったとしても、学生日本一を争う「甲子園ボウル」に出られなければ生放送のテレビ中継さえほぼありませんので有名になれません。有名にすらなっていない人がNFLのドラフトなどちゃんちゃらオカしい話です。ドラフトにかかるようアメリカのスカウトらから注目されるには、最低でも甲子園ボウルに於いて「1年生から攻守両面でダントツのMVP級な活躍を見せる」必要があります。片面だけじゃダメですね。(アメリカ人から見た場合の)無名選手は攻守蹴のどこでも出来る必要がありますから。

という奇跡の選手を待ち望み、ようやく1人目のNFL選手が出たとしてもそこからまだまだ先はあります。2人目3人目が出てきていよいよシーズンを通してベンチ入りし試合出場、複数年レギュラーでプレー、そしてオールスター選出、華々しく引退して殿堂入り。今から何年かかる事か。その頃には我々は生きていないかもしれません。

それよりも!!もう一つの「独自路線」追求のほうが面白いと思うんですよ。

NFLとカレッジフットボールの小規模版ではなく、グイーっと自分たちのアイデアを満載した古くはあの山田晋三さんが参戦した「XFL」、現在も運営している「AFL(アリーナフットボール)」に「CFL(カナディアンフットボール)」そして女子の「LFL(レジェンズフットボール)」。それぞれの説明はここでは割愛しますが、NFLは超ハイレベルなアスリートたちがイチバンの売りで、歴史や地元の誇りが満載ですので他の団体が真似することは不可能です。しかしお客さんを楽しませることに集中した運営で存続できています。

日本のフットボールは大きく分けて学生と社会人の2大勢力があり、学生はやはり学業の一環ですので、人間力を磨いたりなど「勝利こそ全て」というわけではありません。

ところが社会人リーグは学生時代の余力で軽く楽しむ場所だったのですが、かつてのバブル景気でチーム数が激増し、大学時代に優秀な成績を収めた選手らが片っ端から就職させてもらえるついでに社会人リーグでプレーすることになりました。会社の広告塔であったり社員の意思統一など、スポンサー会社によって目的は様々でした。しかし基本は生活や将来のために就職した「オマケ」でプレーしていたわけです。昔は基礎体力を徹底的に鍛えるという文化が皆無だったので現役引退も早く、26歳で「ベテラン」などとテレビ放送で言われたものです。

よって、かつての社会人リーグというのは羽振りの良かった大会社が気まぐれで作って活動する、誰がどう見ても真剣味の足らない遊びのリーグだったわけです。当時のテレビ映像をみると筋肉の少ない貧弱な体躯に大きな防具が滑稽で、ゲーム中にヘラヘラと笑う選手の多いこと多いこと。100キロを超えるような選手は殆ど存在しませんでした。それでも見て面白く刺激的で、殆どが動員とは言え観客も会場に多く来て、しっかり楽しんでいました。

現在残っている社会人チームは殆どが実業団ではなくクラブチームで、スポンサーの居ない自主運営チームも多数あります。強豪ではわずか2チームだけが実業団。他は選手それぞれが別の職業に就いたクラブチームであり、殆どのチームで各部員が年間約10万円前後の部費を払って活動しています。週に2度練習があれば良い方で、大抵は週に1度集まり練習やミーティングをします。オフ期があるので活動は実質年間40週ほどで40回の練習。これではどうひいき目に見ても趣味の範囲です。休日の釣りやゴルフと大差ありません。この条件で打倒NFLは結構キツい話ではないでしょうか。

家庭や仕事の合間にやっている趣味ですが、フットボールという競技の特性上、毎日のように体をしっかりと鍛えておかないと必ず怪我をします。「苦しい事は無し。あくまでも楽しく」というのは絶対に不可能で、チームの強い弱いに関係ありません。でも自分で選んだ趣味なので辛いトレーニングには耐えるから楽しくやりたい。そして観衆が多く居る中で試合したい。出来ればその試合で勝利したい。となります。2チームあれば必ず1チームは負けるのでそこは永遠にどうしようもありません。

しかし「観衆が多く居る中で試合」というのは運営側が必要と感じ、その気になれば色んな方法が生まれてくるでしょう。この集客方法に独自路線を入れ込み、1部リーグ2部リーグ関係なくファンというかサポーターが存在し、毎試合盛り上がる仕組みがあれば「打倒Jリーグの観客数」を目指す事も出来るのではないかな?と思います。

日本中の子供たちの中から、他のスポーツでエリートになりそうな子をいち早く発見し、特別な教育を受けさせNFLのスターにする。という仕組み作りはほぼ不可能ですが、社会人フットボールを盛り上げ、プレイヤーと観客がしっかりと楽しみ、充実した興行にしてしまうのは「ヤル気と根性」さえあれば何とかなるように思います。

ボールを少し小さくする、点が入りやすくする、フィールドの大きさを変える、ショウの要素を多くする、ハーフタイムは有名芸能人が登場、観客の数も得点に加算される、ルール説明の上手いスタジアムDJを置く、などの馬鹿馬鹿しいと思うような事も含めた「オリジナル」を生み出し定着させる事で、そもそも見て面白い競技だった筈のフットボールを元に戻す事が出来ます。

お客さんは新鮮な刺激があれば寄ってきますがスグに冷めて別の所に行ってしまうものです。そんなのはその道のプロが仕事として刺激を出していけば良いことです。行われている試合自体は熟練の選手らが本気の肉弾戦を繰り広げているのですから絶対に面白いんです。

「見せてやっているのだ」というスタンスを改め「どう見せるか」「どう見てもらうか」に注力してオリジナルな独自路線を進めば世界2位の競技レベルではあるのだから、今の何十倍も楽しくなると思うのです。人は楽しい所に集まり、人がたくさんいる所に集まります。人が居ないという事は楽しくないのです。これだけ魅力的で面白いスポーツであり、人生の殆どを費やして愛したフットボールですのでいつまでもマイナースポーツと呼ばれるのはとても残念です。打倒NFLは数名のトップ選手に個人で頑張ってもらえば良いわけで、社会人リーグがどこに向かっていくのか、今後もしっかり見守っていきたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました