多聞コラム11jun2015_vol,96「ゴリゴリ多聞、自伝を語る45」ドイツでプロデビュー

NFLヨーロッパ

1998年4月3日金曜日

明日はいよいよ試合です。僕が出場するかもしれないプレーが10個発表され、僕がキャリーするランプレーも含まれています。大丈夫やろか?心配です。

1998年4月4日土曜日

いよいよプロとしてのデビュー戦の日です。とりあえず朝からミーティングがあり、ホームゲームなのでホテルからいつものバスで球場入り。思っていた以上にファンがたくさん集まっている。車の渋滞も凄いけど、「プレイヤー用バス」なので白バイで先導され優先的に走行させてくれました。プロって本当に凄い世界。

球場の周りの公園や駐車場ではお約束の「テールゲートパーティ」で大盛り上がり中。出店も山ほど出ていて、NFLエキスペリエンスの施設や、ステージでは有名スターがライブをしていて、ありとあらゆる遊びが集結しています。チームの広報の人に僕ともう1人だけが呼ばれ、ライブの合間にステージに上げられ、DJにインタビューされました。数千人が居る前で英語でインタビューてアンタ。でもここでもしっかり「掴み」はやっておかないと。「ハローデュッセルドルフ(これはこのまま)!私は日本から来ました!番号は21のタモンです(ドイツ語で)!」と叫ぶと大観衆から拍手喝采大盛り上がりです。作戦成功。その後は街に居てもどこにいても名前を呼ばれてサイン攻めにあいまくりました。

練習でいつも使っているロッカールームに行くと、自分のスペースに試合用ユニフォームが吊るしてあります。ヘルメットもワックスでピッカピカに磨かれ、細かい部品も新品に取り替えられていました。さすがプロです。日本では前に日に自分でやる事をプロになれば誰かがやってくれるわけですね。燃えてきます。そして皆より少し遅れて試合前練習に参加、スタンドにもお客さんが少しずつ入り始めています。花火と大砲が鳴る派手な入場行進で僕も緊張していながらも超興奮状態。開幕戦なのでアメリカから来たNFLのコミッショナーがコイントス。やっとここまで来れたんやなと思いとても嬉しい気持ちになっていました。

フィールドから客席を見上げると全体が揺れて見え、企業の動員などではなく、熱狂的なファンのひとりひとりが自分のお金で入場し、思い思いのスタイルで大騒ぎして我々の(僕以外の)プレーを見に来ているのです。「この感動を忘れたくない」と当時の日記に書いてあります。「でもシーズンの終わりには慣れてしまっているんやろうけど」とも書いてあります。全くその通りになりましたが。。。

試合では極度の緊張もせず伸び伸びとやれた気がします。オフェンスで15プレー出場。残念ながらボールをキャリーするチャンスは貰えず全てパスプレー。プロテクションは1つ間違った。キッキングでは多く出場したがパントリターンチームで2回ほど相手にやられてしまった。アメリカ人の本気のパワーに早く慣れないと。

オフェンスのプレーで問題が生じた事がありました。ワンバックで左のタイトエンド+3人のレシーバーな隊形から3歩ドロップバックのパス。ランニングバックの僕は右側守備エンドのインサイドナンバーへ突っ込んでプロテクションするのが任務です。195cmはあろうかという手足の長い汗だくの黒人選手が第3ダウンのパスシチュエーションでブルブル言ってQBサックを目論んでいます。ビビった僕は彼の番号が書いてある胴体の部分ではなく右足膝あたりに突っ込みました。衝撃は少なかったのですが彼は見事に転倒し、パスも成功で僕は役割を全うしました。そして守備の彼に僕は勝利した。と思っていたのですがアメリカは全く違いました。

パスが成功したのでファーストダウンになり、僕はベンチに下がります。チームメイトからヘルメットを叩かれ「ナイスブロックや!」「ナイスやタモン!」と賞賛されまくったのですが「でもな、次はやるなよ。もう無理やぞ」「2回目は無理やで」「あれはアカンで!」とみんなに言われまくりはじめました。結果など良くても、シーズン初盤です。「ラインファイヤーの21番はヘタレやから下に寝っ込んで来よる」というデータを蓄積されただけだと言われました。195cmのディフェンスエンドをどうやってプロテクションするん?!と悩む前に試合で他のアメリカ人ランニングバックがどうやっているか学ぶしかありません。

その後アメリカ人の習性を自分で研究してわかったのですが、初対決時にそんな「奇襲」をすると男気がないヘタレ。自分から僕は弱いですと言っているようなものなので今後ずっと舐められる。つまり永遠にイニシアチブを取られてしまう。という図式になっているのです。アメリカは結果だけではなく、そのプレイヤーが選手として皆から認められる「オトコ」なのかどうか?が何よりも重要なのですね。

日本では、どんなにカッコ悪くても試合にさえ勝てば構わない。なぜか?それが目標だからですね。

でもアメリカ人はNFLのチームに認められ、メディアから認められ、ファンに認められ、コーチから認められ、他の選手からも認められる必要があるのです。まず自分の活躍があり、それを有効に使って試合にも勝つ。

他人やチームに気遣いする前に自分がもっと頑張る。アメリカ人はこの集合体です。そしてそんな手練の猛者どもを軽く手なづける大親分が「ヘッドコーチ」ですね。

ラインファイヤーにもおじいちゃんの素晴らしいヘッドコーチ(ランニングバック担当:現フロリダ在住)が居ました。沢山の事を教えてくださいました。まだ開幕戦です。毎週ドラマがあるのかどうなのか、とにかく少しでも多くの情報をキャッチして上手くなって帰国するぞ。と張り切る僕でした。試合後はもちろん皆んなでナイトクラブへ飲みに行き、ベロンベロンで就寝しました。明日は朝からコンディショニングです。。。

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