多聞コラム25may2015_vol,93後ろから追いついてくるであろう何者かに怯えるとは

 朝起きるたびに今でも「ああ、引退してるんや。だから今日もトレーニングせんでエエんや。仕事だけしとったらエエんやー」という大きな喜びを味わってから1日が始まります。朝から大満足で行動開始です。NFLEから帰ってきてしばらく経った頃に書いた手記が残っていたので今回はこんなネガティブに苦悩していた僕の秘密の気持ちをお読みください。わかりやすいようにところどころ手は加えております。

〔上を目指して一心不乱に脇目も振らず頑張っていると、「休む奴はアホや。遊びたいと思う奴もアホや。若い時にしか出来へん事を全力でやったる。俺より上手くて有名な奴ら!今にみとけ!」とだけ考えて突き進んでるけど、NFLヨーロッパに行きアサヒ飲料で優勝に関わるような働きが出来るようになってからは、「後ろから追いついてくるであろう何者か」または「前で立ちふさがる何者か」に毎日怯えてる。それはチームメイトのライバルかもしれないし、敵のディフェンダーかもしれない。または自分の気持ちや怪我かも。何しろ毎日がしんどくて辛くて泣き叫びたい気持ちでイッパイだけど、誰よりも偉そうに振る舞い余裕をブッコいて悪役を演じる俺が「泣き」を入れる相手など、この世に存在しない。品行方正である必要など無い。紳士である必要も無い。藤田さんの命令をこなせれば何でも良いんだ。という信念で毎日を過ごしてる。

選手として安定し、地位を防衛し続けるために、俺程度の運動能力しか持っていなければあらゆる感情を捨て心と体を鍛え続けるしか方法はない。感動したり、泣いたり、驚いたり、喜んだり、怖がったり、焦ったり、照れたり、といった戦いには不必要な感情は特に殺してしまわねばならないんだとラインファイヤーのコーチから教わった通り実践している。おかげで日常生活でもそういった感情が削除されてしまい変になってきている。

世界中のランニングバックでジョギングが最も苦手なので、しんどいトレーニングもキライ。ツラいこともキライ。でも、ここ数年は一目置かれるようになってしまい、沢山の期待を背負って活動しているのでカッチョ悪いところは見せられない。いい練習をする日本人ランニングバックが居る。サンスターの山下久行(追手門卒)と飲料の進藤健史(東海大卒)。練習でもプライドをかけて全力で相手に向かっていく。年長者だけど余裕をこいたりせず本気がにじみ出ている。いい刺激だし、しっかり見習って追いつき追い越す。〕

なんて事を考えていました。僕もそれなりに必死だったのですね。

現在と同じくレストランをしていましたから夜に仕事をしているので生活時間は一般の社会人とは少し違います。なるべく午前中に起き、近所で走ったり飛んだりのトレーニングを1~2時間ほど、休憩したらジムでウェイトトレーニング、バイクを漕いでエアロビクスやヨガなどをスタジオで。

土曜と日曜のチーム練習では試合以上に本気で走って当たって叫んで暴れて。練習でもミスは一切許されません。まあそれを許さないのは自分なのですが。自分の一挙手一投足をチームの全員が見ているんだという気持ちで常に緊張感を持って練習に臨む。そして試合は当然ながら持てる力の全てを出し尽くす。強豪でないチームの場合でも、試合の初っ端から全力。様子見とかは全く無しです。なので自ら志願して試合の第1プレーである「キッキングチーム」に入れてもらうようにします。リターナーでもあるので先攻の場合は自動的にメンバーに入っていますが、後攻だった場合の守備側でも出場させてもらっています。

自分がまだ上級者ではなかった頃、試合開始の第1プレイはとても緊張していました。それどころか、「タックルされたり」「タックルしたり」を繰り返した後でなければ緊張はほぐれず、試合開始早々から自分のチカラを出すことは非常に難しい課題でした。ということは! 敵チームにも緊張してる奴が居てるはずや!そのスキにガツーンとやってしもたる!というセコい作戦です。試合開始早々っていうのは初級者の君らがプレー出来るフィールドやないんやで!というのを思い知らせようとしていました。話がずれてきました。今回は自慢話ではなく重圧が苦しいというお話。

長かった無名時代に「有名選手なったなら!」「ヒーローインタビューではこんな事を言ってやる!」「引退はこんな風に!」という身の程をわきまえない先走った夢をいつも追いかけていました。実際にそのような立場になってしまった上に根っからの目立ちたがり屋ですから常に注目されたいわけです。しかし注目されると失敗した時にカッチョ悪いわけです。それがイヤなので交通事故(*1)や死亡事故(*2)を出来るだけ起こさないように警戒します。しかしそれでは活躍できないのでやはりホームラン(*3)を打つために思いっきりフルスイングをしたいわけです。しかしそうするとミスの確率も上がってしまうので。。。という循環で毎日悩み続ける日々を送っていました。でもどうしても試合で活躍したくて鍛錬には妥協せず生活の全てをフットボールに賭けていました。その重圧がなくなったいま、毎朝ホッとしている。というお話でした。でもフットボール独特のスリルや高揚感は普段の生活では得られないので、何か物足りない気もしますが二度とハードな運動はしたくないのが正直な気持ちです。

  1. マトモにタックルを食らう事
  2. ファンブルして相手にボールを奪われる事
  3. 独走タッチダウン
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