出てこい60 minutes man
フットボールのルールなんかわかんなくても楽しめるプレイヤー。僕が目指していたスタイルであり、僕が好きなプレイヤーです。「凄いブロック」に代表される、玄人好みな活躍が無ければフットボールが成り立た無いのは百も承知ですが、試合会場でリプレーが見れ無い事が殆どの日本では、最近流行の「アン・サングヒーロー」の活躍を素人が発見するのは非常に難しいです。
いま、日本のフットボールに求められるのは「スーパースター」です。誰が見ていても活躍している事が明確にわかるパフォーマンス。初めて試合会場に連れて来られたフットボールに興味の無い人でも「あの人が活躍していることだけはわかる」と言わせられるプレーヤー。そして数ヶ月あとにたまたま見たスポーツ欄のニュースでチーム名や名前を見つけるのです。お正月に暇だからたまたまつけたテレビのスポーツでまたその名前を見つけ「あ、この人知っている。この前試合見に行った時に凄く目立っていたので覚えてる!」と言われるプレーヤーですね。
日本フットボールでは過去現在を通してダントツに有名で、一般の人からも名前を知られていた京都大学の東海辰也氏。新聞にも載るほどのニックネームは「怪物くん」。メンバーをスポーツ推薦で入学させることが出来無い国立大学なのに2年連続で日本一になり、社会人ではアサヒビールシルバースターでも大活躍。クォーターバックなのにライン級の体躯を持ち、野球経験者らしい抜群の運動神経と強肩、そして強気で豪快なプレースタイルとリーダーシップでフットボールを見る人を魅了して止みませんでした。
立命館大学からプロフットボールに挑戦し続け、日本では全くの敵なし状態な河口正史氏も守備選手ながら観客やテレビの視聴者を楽しませました。高校時代をアメリカで過ごしウェイトリフティングやフットボールで体と技術を鍛え上げ、日本では見たことのない太い腕、凄まじいスピードと破壊力のあるタックルでブロッカーもろとも跳ね飛ばして仕留めるスタイル。プレーが始まる前に味方選手とのコミュニケーションの取り方、タックルしたあとのアクションや仕草は斬新で、端から見ている我々には「ワルっぽいアメリカ」を感じさせてくれました。日本にもいよいよこんなのが出てきたんだな。と当時を知る人は感じたと思います。
そして、日本大学フェニックスの篠竹監督。東京で年配の方とフットボールの話をすると「ニチダイ」という言葉は必ず出てきます。「日大に凄い監督居たよね。えーっとシノタケ監督!怖い監督さん!」となります。篠竹監督が常勝日大を長期間率いておられた頃、関東での有名度はハンパでは無かったという証拠でしょう。テレビに映る強面で選手を叱り付けるシーン、インタビューに答える時の目つきや声、その迫力は一度見た人の記憶に焼きつくには十分だったという事です。やはりそれがカリスマ性でありスター性。三武ペガサス時代に日本大学との合同練習で数度お会いした事がありますが、ふざけた僕のような人間でも話しかけるような大それたマネは出来ませんでした。
そしてその篠竹監督のもとで1980年代前半に活躍した日本大学フェニックスの名クォーターバック松岡秀樹氏。在籍した4年間連続で甲子園ボウルに出場し、長身で俊足、投げる投げると思わせて走り出したら止まらない。怪物くんと同じく野球経験者なので運動神経と根性は抜群。甘いマスクと8頭身で野球選手の如く老若男女問わず羨望の眼差しを浴びた数少ないスーパースター。
いずれの方も、非常に大きくわかりやすい特徴や武器を持ち、大きな大会で結果を出している人たちです。よく売れる商品なども同じ事が言えるのでは無いでしょうか。予想や期待を裏切らない事でも共通しています。
最近ではアメリカ人選手が社会人リーグで猛威をふるっていますが、中々スーパースターが出てきません。我々はカタカナの名前を覚えるのが得意では無い日本人ですので、もっともっとテレビや新聞で名前を連呼されねば皆の記憶に残りません。ジーコ、マスカラス、ラモス、バース、クロマティ、ブッチャー、ラミレス、ローズ、アンディフグ、ストイコビッチ、デストロイヤー、といった他スポーツの外国人超有名選手の名前はメディアで散々聞きましたし目にしましたので覚えています。この場合も長期間に渡って日本で活躍し続けてもらうしかありませんので、早期の帰国は勘弁してもらいたい。その点、オービックのジャクソンケビン氏はあれほどの優しく知的なお人柄とは思えない残虐性のあるプレースタイルで、日本フットボールに非常に貢献されていると思います。彼に続く外国人選手を熱望します。2年3年チョロっと冷やかしでプレーして帰っちゃうみたいなのはフットボール全体のファンからすると不必要。
そして今、日本で圧倒的なパフォーマンスを「魅せる」選手といえばオービックの木下典明氏だと思います。驚くべきスピードとアクセラレーションで敵をブチ抜く様は、放送するテレビ局が彼を撮るためだけに2台3台の専用カメラを用意すべき価値のある唯一の選手でしょう。しかし、残念ながらポジションがワイドレシーバーなので常時ボールを持つわけではありません。よって活躍する機会が非常に限られている事が僕はとても不満です。スターではなく「スーパースター」というのは皆さんがどう思おうが昔から「クォーターバック」と相場が殆ど決まっています。NFLのスーパーボウルMVP受賞者も過去49回で半数以上の27名ものクォーターバックが獲得しています。
ワイドレシーバーとリターナーを兼任する木下選手にはもっともっともっともっとボールを持つ機会を与えて大暴れしてもらい、街を歩くフットボールに無関係なオッサンらにも名前を知ってもらえるようになって欲しいと思います。その為にはクウォーターバックやランニングバックのポジションからのプレーや、守備でも出場してインターセプトから独走タッチダウン(60 minutes man = 60分間オトコ=試合に出ずっぱりの体力実力ともにリーグの遥か上に位置する神に近い存在)するなど、過去に前例のないスタイルでスター街道を邁進してもらいたいです。あれだけの能力を1試合に10回やそこらだけのボールキャリーでは「スーパースター」を待ち焦がれる我々としては満足できません!
春のシーズンが始まりました。今年は世界選手権もありますので色々楽しみですねー。
