ファイナル6敗退により、シーズンが11月16日で終了しそのあとは個人のトレーニング大詰めです。21日後に控えたワールドリーグ(*1)のトライアウトに合格するためです。
試合では大した活躍もして居ない(*2)ので翌日も何ら体の痛いところもありません。筋肉痛すら無い状態です。ですから直ぐに100%のトレーニングが開始できました。昨年度の落選から約300日。誰にも指導や指図されず、頼れる人も居らず、相談出来る人もハッパを掛けてくれる人も居ない孤独な日々(*3)もゴールが見えてきました。会社勤めの身分(*4)でしたが、超のつく安い給料(*5)で妻子との暮らしは貧しさのドン底。十分なサプリメントも栄養も摂取出来ない(*6)中での体づくりにも限界が見えてきました。
- (*1)後のNFLヨーロッパ。
- (*2)4回14ヤード+キックオフリターン数回のみ
- (*3)家族や友人以外に、身近でコーチやトレーナー的な人に信頼できる人が居ませんでした。これについてはまた別の機会で詳しく書こうと思っています。
- (*4)建設会社の営業マン
- (*5)28歳、妻子ありで手取り13万5000円。年収200万円弱。これでは暮らせません。
- (*6)朝食にサツマイモとキャベツのお鍋。昼食は上司が食事に連れてくださる事が多く、夕食はゆでたまごと他少し。というニュートリションプログラム。
11月の末に会社の休みを頂き、僕を応援してくれる仲間たち(*7)とグアム島へ最終調整のトレーニングキャンプに行きました。ボールやトレーニング機器はファイニーズから借りて持って行きました。事前にグランドを予約したり確保したりという気の利いたキャンプではなく、ホテルの駐車場(*8)で40ヤード走のタイムを計ったり、中庭でスピードトレーニングやボールのキャッチング練習をしました。当然ホテルの人に、「お前らアホか!ヨソでやれ!」と怒られます。言葉通り、直ぐに撤収してヨソに移動します。でも、大阪でトレーニングする時も街中の道路や公園を使っていましたので、少しのスペースで効果的な運動を創作して勤しむのはとても得意になっていたのでなんら問題ありませんでした。
- (*7)キヨシ、ショーヘイ、ユーキの3人。彼らが居なければ最終調整がうまく出来ず、最悪日本で風邪でも引いていたかもしれません。全ては後ろで支えてくれた仲間、家族、友人がいてくれたから。遊ぶときに僕が減量中だったりで何も飲めず食べられず、つまんない気分にさせたりしても文句言わず応援してくれていました。
- (*8)完全な平坦地ではないことも多く、場所探しは大変。でも細かいことは気にせずやれる事をやる。
炎天下のグアム島の昼間(*9)に駐車場で40ヤード走の練習をしていたら、上半身ハダカな白人のオッさんが近寄ってきて「お前らココで何やっとんじゃ。ん?なになに?40ヤードやと?!ワシめっちゃ早いど!勝負せえや!」と。そこそこ自信ありげな雰囲気(*10)だったので、良い緊張感を味わう練習にもなるし仲間に入れてやりました。酔っぱらいでも無いのに、こういう気質がアメリカ人やなあと随分感心しました。
- (*9)絶対40度以上あるハズ。誰も外を歩いてないし公園も一切人がいない。
- (*10)オッさんには負けなかったけど、急にダッシュするとかホンマに凄いわ今考えたら。
休憩時間は体を冷やして休めるためにズーッとプールに浸かっていました。十分に日焼けして少しでも強そうに見てもらえるように。とう意味もありました。他の受験者は冬ですから恐らく透き通るような美白に違いありません。やる気満々な顔つき(*11)で浅黒く日焼けしておけば「何だかコイツやりそうな気がスル~」という観念を与えられるに違いありません。
(*11)言葉が通じないので目と態度で気持ちを表現するしかありません。ダンサーや俳優の基礎を学ぶ為の本も読みました。
旅費でギリギリだったので食事は全てスーパーで食材を買い、サンドイッチを作ったりと楽しくやりました。夕食だけはレストラン(*12)に行き、将来の飲食店経営に向けたリサーチも忘れません。もちろんお酒は飲みません。
(*12)当時まだ日本には少なかったハードロックカフェ、フライデーズ、プラネットハリウッド、その他。。。。メニューブックを頂戴したりとしっかり勉強してきました。
帰国してあと数日で「審判の日」が訪れます。もうやれる事は全て(*13)やりました。1分の油断もなく、徹底的に考えて実行してきました。神経系のトレーニングは時間をかけて繊細に。しんどい系のトレーニングでは気絶してしまうまで責めました。「どんな人間でもこれ以上の事は出来ない筈だ」と心から信じられるまでやってきました。
(*13)とはいえ、睡眠は取るし会社にも行く。まだまだ甘い話でした。
前年度のトライアウトで、傾向と対策は万全。日本人とアメリカ人のファンダメンタルの違い(*14)をNFLなどのテレビ放送で徹底的に検証し分析。アメリカ人が普通に感じる事を普通に出来るようになっておく事。ココに重点を置き訓練してきました。
(*14)「何が違うの?」と聞かれても教えません。たぶん伝わらないし。
すべての動きに「アメリカ人っぽさ」を意識し、他の受験者とは「少しの違い(*15)」を感じてもらえるような役作りに腐心しました。最重要科目の40ヤード走はタイムだけでなくその仕草が大切です。我が国独特の「徒競走スタイル」ではアメリカ人が見た時に違和感があります。スタートの構え、走行中のフォーム、顔つき、ゴールの仕方、注意すべき点は無限にあります。
ボールキャッチでも手の出し方、顔の位置、身体の向き、足の置き方、全てにおいてアメリカ人は「少しの違い(*16)」があります。
- (*15)「何がちゃうの?」と聞かれても教えません。たぶん伝わらないし。
- (*16)「どう違うのって!」と切れられても教えません。たぶん伝わらないし。
受験を希望するポジションはランニングバック(RB)ですが、実際はレシーバーとしての試験しか用意(*17)されていません。結局はパスが捕れるかどうかが重要なのです。良いスタートをして、良いキャッチが出来るかどうかなのです。これも一人でズーッと訓練してきました。ボールを投げてくれる人が都度都度居れば話は別ですが、日本人の投げるボールでは練習にならないどころか野球のノックのようにどこに飛んでくるかはその時次第という状態で、何の練習をしているのかわからなくなってしまいます。だからボールなしでキャッチングの練習をしていました。意味わからないでしょう?でもちゃんと上手くなりました。その証拠にトライアウトでは国内のディフェンスバック相手の勝負で、1度の落球もなく全ての勝負に勝ち(*18)ました。
- (*17)若干は用意されていますが、それは超ヘタクソをふるいにかける為の物で、実際の性能はノーギアの試験で測ることは出来ないのでしょう。つまり見ているところは「ソコ」じゃないという事なのです。
- (*18)昨年同様、受験者の日本人が投げるボールが荒れており、勝負とは関係ないところにボールが飛んでしまうという事故が多発。
グアム島に同行してくれた仲間や、その他の友人らも太鼓(*19)を持ってトライアウト会場へ応援に来てくれていました。彼らはフットボールのことはあまりわからないので、テストでキャッチが成功しても、試合の時と同じようにスタンドで太鼓を叩いて大はしゃぎ。これはちょっとマズいかな?とアメリカ人試験管を横目でみると、「オモロい奴っちゃな」と思っているに違いない表情で笑みを浮かべていました。
- (*19)三武ペガサスの洋風大太鼓。現在はアサヒ飲料チャレンジャーズの倉庫に眠っているハズ。幸運の大太鼓。神戸大の元ヘッドコーチが持ち出したことがあったが返してくれたかどうかは不明。
