今の時代、実際に対面せずともネット上である程度のコミュニケーションを取る事ができるようになっています。固定電話にファックス、そして手紙でしか連絡出来なかった時代を生きていた我々には現代が本当に便利で仕方ありません。
自分だけが抜きん出るため、フットボールに有効なトレーニングをするに当たって、以前なら情報を得るという努力をするだけで大きなアドバンテージになったのですが今は皆んなの情報量が同じなのでどこで差をつけるかを模索するのが大変です。
でも結局のところ自分でアンテナを張り巡らせキーワードなりを見つけて調べにいく。というのは今も昔もそれほど変わっていません。大きな図書館や書店でせっかく探し出した良い情報が書いてある本を発見してもそれが激しく高額で簡単に買えない時は自分の低い所得に嘆いたものです。今ならネットでサクサクサクーっと調べりゃ結構な量の情報が得られます。良い時代になったもんです。
さて今回はランニングバックだけでは無いかもしれませんが、僕は最近の若者の傾向が「真面目すぎる」と感じているのですが皆さんはどう感じていらっしゃいますか?「真面目」大いに結構だと思います。もちろん中には世の中舐めまくった変なやつも居るかもしれませんが、大学や社会人でフットボールをプレーしている人の中では「元不良」だとかはもう絶滅しているように思います。あ、本場米国は違いますよ。多くの元ギャングだとかが普通に大学やプロでフットボールしていますから。
しかし、真面目は良いことです。自分の目的に向かって真摯に取り組んでサボったりせず…。なのですが、じゃあそんなに真面目な若者たちの運動性能が上がり続けているのか?と言うと意外とそうでもありません。確かに太い筋肉を持つ選手は20年前30年前に比べて増えています。真面目にメニューをこなし、真面目に栄養を摂取しているから成果が出ています。まあ人類の進化で足が長くなっていたりとかもありますね。
しかしフットボールはここがスタート地点でありその先からが始まりですよね。太い筋肉を使って何をするか?格闘技のように痛みや苦痛、時には恐怖に耐えて激突したり、難しい作戦で迷ったり間違えたりせずファインプレーに結びつける作業は毎日の厳しい鍛錬と同様非常にハードです。そして勝負事には「ずる賢さ」や「狡猾さ」も必須です。これは「真面目」の反対側ですので殆どの若者が持ち合わせていません。
大抵のスポーツは他人との接触、ましてや激突などありません。ま、少ないですよね。しかし武道や格闘技だと急に「人間(相手・敵)を倒す」となって他のスポーツとは大きく違ってきてしまいます。
格闘技のような、殴られたり蹴られたり投げられたり首を絞められたりなんて、有名大学でスポーツをしているような人なら通常の生活では絶対に起こり得ない極めて非日常の世界です。が、フットボールで尚且つランニングバックをやろうとなればフィールド上の守備選手11人がボールを持った自分を地面に倒そうとあらゆる手段を使って襲いかかってきます。しかもこちら側はボールを持っているので十分な受身もとれませんし手が使いづらい分格闘するにも分が悪い。
そこで日本のRB達が発明した方法!!それは「徹底的に衝突を避ける」ことでした。襲いかかってくる敵に対して、逃げるという手段だけを選択するようになったのです。とにかく敵の少ない場所へ向かって逃げる。幸いランニングバックは俊足揃いですので逃げ足は早い。人のたくさん居る密集地帯では誰がどこから襲ってくるか判断しづらいから、明確に人の居ない場所へ一目散。初心者の時にこのようなレギュラー選手を見てしまったらどうしても「それだけ」の選手になってしまいます。自身が逃げているだけの奴だという認識も出来なくなります。
こんなつまんないランニングバックだけしか居なくなった日本フットボール界にやって来た追い風はパス主体の「ショットガン大ブーム」です。もう、ランニングバックは人のたくさん居る場所を無理やり走れと言われる事も無くなってしまった(まあでも現在のNFLでは多くのチームがエクスチェンジを使い出していますのでパスばっかりのブームもそのうち廃れるでしょう)わけです。
そして中央を勇ましく走るランニングバック術が滅んでしまったのです。元々それほど多くなかったインサイドランナーが、殆ど消えてしまいました。今はエンドゾーンではなくサイドラインに向かって走る選手ばかりです。
で、最初の「真面目」に戻りますが「真面目」だとしてもこれだけいろんなスポーツや格闘技などの要素が詰まった複雑な競技であるフットボール選手ですから「真面目」だけでは足りないんです。目的を果たすために自分には今何が必要かを広い視野と柔軟な考えであらゆる問題や困りごとに瞬時に対応する能力は「真面目」側からの発想では時間がかかります。
また「真面目」は戦うことを好みませんのでどうしても発想の根幹が「逃げるか隠れるか」になっています。これは「真面目」ではなく「弱虫」という戦いに於いて数段下のカテゴリーに属してします。戦いに勝利するためには逃げ隠れの一手だけではダメでしょう。サイドライン側を狙うのも、中央突破を狙うのもその時のベストな判断なのかどうか?が大切です。
身近にRB指導者の居ないあなたはその「真面目さ」を発揮して僕のコラムをバックナンバーから全て読み返し、練習やゲームで愚直に実践してこの情報をキャッチしていない「不真面目なライバル」に差をつけて欲しいと思います。あらゆるところに活躍する為の秘策が出ていますよ。
ランニングバックはオフェンスです。攻撃なのですから守備を攻撃しないとです。守備の包囲網から逃げるばかりでは攻撃とは言えません。相手をフィールドにぶっ倒す、痛くて怖い思いをさせてやる、守備と守備の間を切り裂いてエンドゾーンに走り込んでやる。俺が活躍しまくってやる。という攻撃的な発想しかない。という野獣なプレーヤー、日本のどこかにまだ居てますかねー?
僕に関わっているプレーヤーらはそうなってもらいたいなと思っています。