多聞コラム3dec2020_vol,257「タモン式教本38」 軽い気持ちなのか、マジなのか

やるかやらないかは自分次第

目標を定めてそれを目指す。この作業は小さなことや大きなことを含めて我々は毎日のようにおこなっています。たとえば「会社や学校に行く」というそれほど難しく無いことでも、遅刻をしない為には何時に起きて準備して、時と場所に相応しい服装で必要なものを持ち何らかの移動手段で道に迷ったりせず目標とした地点に時間通りに到着。服を着忘れたり、場所を間違えたりもせずほぼ正確に会社や学校に到着していると思います。これが目標を定めて目指すってことですよね。キッチリと計画を立てて、それなりのエネルギーを使って目標を達成。

僕はこれまで幾名かのフットボール選手に、アメリカ人のフットボールを日本語で翻訳した「タモン式ランニングバック術」をレクチャーしてきました。NFLを目指す超有名選手や、人数も揃っていない高校や大学のチーム、河川敷のプライベートチーム、そしてXリーグの選手などです。選手をやめて指導者になってからは日本選手権勝利を目指す組織の選手ばかり。

「どんなトレーニングしてるの?一緒にやらせて」「40ヤードを早くなりたいので教えてくれ」「NFLコンバインのコツを教えてくれ」などと本人から依頼されます。この時点では本人のヤル気度の大小はまだわからないので、自分のノウハウを惜しみなくレクチャーし一緒にやっていこうとします。でもここから先は人それぞれで「手抜いてるよね?」「一所懸命やってる?」と疑問の残る取り組みをする残念な人も散見されました。

逆に「もっと教えろもっと教えろ」と毎日ウチを訪ねてくる当時から国内のトップ選手だった選手もおりました。優しくわかりやすく教えていたワケでもなく、頭の中の情報を棚卸ししながら次から次へと注文をつけて訓練するだけです。勤めていた一流企業を退職され、米国でプロ選手を目指すんだから賭けてる気持ちが凄かったですね。こういう人は楽をするだとか手を抜くなどという発想すらなく、とにかく自分の全てを出して僕の全てを盗んでいこうとしていたように思います。

その後も、友人関係で色んな人にコーチの真似事のようなことをしていましたが、どんな気持ちでこのレクチャーを受けているのか、すぐにわかってくるようになりました。軽い気持ちなのか、マジなのか。です。

軽い気持ちの人には気づいた時点で指導を辞め、元の友人関係だけの付き合いに戻しました。喰らい付いてくる人にはこちらも覚悟を決め本気の本気で付き合いましたね。

学生だと甲子園ボウルに勝つ、社会人だとライスボウルに勝つ。が最終的な目標でしょう。まあ学生もライスボウルを目指していますがこれももう無くなるようですからまあ良いでしょう。それぞれの目標はそこに立ち塞がる強すぎる敵に一発勝負とは言え試合で勝利しなければ達成出来ません。

最初の方に書いた「目標を定めて目指す」ってハナシですが、現在では富士通にパナソニック、そしてオービック以外のチームがライスボウルに勝つのはかなり分厚く高い壁になっています。通勤通学で会社や学校に到着して「目標達成」な軽いのとは全く別モノですからね。並の取り組みでは不可能であることは容易に想像がつきます。

チームプレーですから自分だけが凄くてもダメなので組織全体で間違っている部分を正したり、アライメントが狂っていないかのチェックだったり、やるべきことは何万個とあるでしょう。体と心、そして頭を鍛えて作戦遂行力を全員が向上させ、試合ごとに何度も何度も強豪を倒していくとその先に頂上が見えてきます。

こんなのとても大変です。想像を絶する努力の結晶がライスボウルや甲子園ボウルのようなチャンピオンシップのトロフィーなのですからそりゃ当然でしょう。しかしこの「想像を絶する努力」は形あるものではありませんし、人によって様々な形であり、大きさも違えば重さも違うでしょう。感じ方も違います。

しかし「想像を絶するイコール想像出来ない」ではダメなんです。イメージできないからイメージしない。だから道筋をプランニングできない。これでは話にならない。

例えば30キロ離れた場所の学校に遅刻せず到着しようと思えば歩いて行きますか? 電車やそれに準ずる速度で進むものに乗って行かねば何時間もかかってしまいます。学校の方角を向いても遠く離れていますので肉眼では到底見えないでしょう。だからと言って距離を知らないまま、その方向に自分が決めた心地よいペースで進んだところで道もわからなければ要する時間もわかりません。歩いていればやがて到着し目標は達成できるだろう。この考え方をする人の多い事多い事。

それなりに頑張っていればいずれはチャンピオンになれる。そんなわけありません。ゴールまでの行程を把握し、時間と距離を鑑みて計画を立て最速で進むことをしなければ。つまりフットボールで言うと「大会に出場してくる誰よりも」準備してこないとですわね。それでもなかなかチャンピオンになんてなれませんよ。

ここ数年、とにかく高い勝率でリーグのトップに君臨する富士通と関西学院が「それなりに頑張っているだけ」なハズがありません。それはグランドを走り回る人だけではなく、人が入部したくなるような後ろ盾組織を作り、素晴らしい人材をスカウトし、スケジュールや準備の仕組みやら何から何まで勝てないチームとは大きく違うのでしょう。

勝ちたいと言えば勝てるのではない。最後の瞬間まで君の出来る事を大会に出てくる誰よりも高いレベルでやり続けなさい。それがチーム全体に繋がったら夢が叶うかもしれないけれど、君が1mmでも油断した準備をしてしまうと全て終わるんだよ。勝ちと負けは操作できないが、チームに良い悪い共に大きな影響を及ぼす事は出来るハズ。とタモン式の選手にはよくこのように話しています。

あくまでも僕のモノサシではありますが、前述した本気で取り組んでいる選手から見れば道筋をプランニング出来ないようなボヤッとした奴に負けることはありません。

道の距離と険しさ(現実)を知り、時間(卒業や引退)までに到着する方法を徹底的にプランしてあらゆる有識者に相談し、人生を賭けて努力を繰り返さねばならないのが世の常でしょう。そしてそこに運や才能が乗っかってくる。全力で取り組むことはやる気次第で誰にでも出来ます。結果を出せるのはひと握りの人だけですがそれは仕方ありません。

「日本一を目指した気になって過ごした選手時代」を人生の彩にしたいだけの人と「そのトロフィーをこの手に獲る」を本気で考えている2種類の人が存在する。ってことをここ数年で改めて感じました。

下級生の時から直向きにとにかく僕を信頼してくれ、引退するその日まで頑張ってきた選手が居ました。彼はトロフィーを手にするという結果は得られませんでしたが、全身全霊で頑張った時間は「学生時代の思い出を彩る」というレベルではありませんでしたので、社会に出てからいつか何かの役に立てば良いなと思います。本当によく頑張っていましたので。報われない、叶わない、事の方が世の中には多いかもしれませんが、本気の全力で挑戦することの尊さを勉強させてもらいました。

本当の意味での覚悟を持たないのであれば、イチバンを目指すと軽々しく言うな。と心底感じている僕は厳しすぎますか? もしかしたら皆さんも本当は同じように感じていらっしゃるのでは?

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