多聞コラム25nov2020_vol,257「タモン式教本37」日本独自の初心者用基礎技術卒業推進

 前回はファンダメンタルを装備してからスキルを伸ばすべきだと書きましたが、これらは年代やリーグによって要求される事は違って来ることが明確にわかってきました。

子供のうちはフラッグフットボールやタッチフットボールで、フットボールの楽しさを知り、高校生ぐらいでハードなヒットやタックルを伴う大人と同じルールのフットボールになります。そして大学や社会人になっていく。

この年齢が上がっていく時に、基礎技術も応用も変化していく事を知らない高校フットボール経験者がとてつもなく多く存在する事をここ5年間の大学コーチ経験で学びました。

高校の1年生で入ってきた筋肉や運動神経も未熟で、痩せてヒョロヒョロの初心者には、恐怖感を少なくし怪我のリスクが少ないけれども強く当たれる方法をコーチやフットボール未経験の先生方が工夫に工夫を重ねて指導されるのが大方のようです。これはフットボールの試合を見たこともない、体当たりの何かも全く知らない人に指導するために日本が独自に開発した体当たりの方法です。

そしてこのレベルを乗り越えたら一人前のフットボール選手として練習に参加などし始めます。作戦や戦術、細かなテクニックや強くなったり速くなったりする練習を経て上手くなっていきます。

もちろん、殆どのプレイヤーが上達して、強く、上手く、速く、賢く、プレーするようになります。この段階で昔習った「初心者用のヒット方法」を使う人の多いこと多いこと。「それ、どこで習ったの?」と聞くと全員「高1の時に」と答えます。ま、そうなのでしょう。その時はそれで良かったのですが、今君らはその方法じゃ上に行けないんだよ。だから大人やアメリカ人のヒット方法をやって行こう。と案内しても時すでに遅し。超のつく拒絶反応で「強いクセ」が取れません。

結果、どうなるかと言うとそれほど上達せず活躍できず埋もれてしまいます。ガリガリの初心者と、筋肉も技術も知識も付いてきた人では必要なファンダメンタルが違うのですね。もちろんその先のスキルも違いますが、ファンダメンタルが同じと勘違いしたまま上級者向けのスキルを身に付けようとするので上手くなりません。運が悪いと怪我もしてしまいます。

既成の概念による固定観念が自分の上達の邪魔をするのです。当然、僕のプレゼン力が彼らの固い心を懐柔出来ない事にも原因があります。本当にすみません。

僕は、試合出場しそうになってきた(3年生くらいでしょうか)選手に指導をしてきました。でも彼らが高校1年から大学2年までの5年もやってきた方法は簡単には拭えません。アンタの言う事を全面的に信用して採用するからなにもかも全部教えてくれ!と向かってきた選手は殆どの場合「強いクセ」を取り去り、正しいフットボールを身に付け、試合でそれなりの活躍を見せるまでに成長してくれました。ま、僕の手を離れると元に戻っちゃうのが残念なのですが。

ただ、自分が関心のある(又は苦手な部分の)少しの部分だけ教えてくれ。と考える選手にはこの「身体中の血を全て入れ替える」指導法は全く通用しません。ですから当然本人が望んだような良い結果は出ません。

フットボールには、体当たりを中心にプレーするポジション(ラインマン)と、走り回るポジション(スキルポジションやバックス)があり、役割が分かれています。ラインマンらは「初心者フットボール」を卒業するのが比較的早いようです。チームに当たりの強い先輩や選手が居れば毎日当たり負けるのでしっかり考えて成長していくのだと思います。

僕の担当するポジションである「バックス」の選手たちに今回のテーマが当てはまります。フットボールですから敵と激突する事がしょっちゅうあります。他のスポーツと極めて違う点であり、フットボールの特徴はこの激突にあります。その後に、緻密な作戦や役割分担などの特殊性があると思います。が、とにかく皆んな体当たりが嫌い。苦手。練習しない。弱い。そして下手。

体に染み付くまで繰り返し練習した「正しいファンダメンタルとスキル」を使って、敵との激突を微塵も恐れずに(何なら楽しみながら)ハードなプレーを繰り返す事の出来る選手。前置きが長くなりすぎましたが、ぜひこうゆう選手を目指していただきたい!!

フットボールに詳しくなり、技術も上がってきた。細身なので走るのはまあそれなりに早い。だからパスの時に守備の隙間を読み取ってスルスルっと入り込んで見事にキャッチ! 日本中がショットガンオフェンスでパスが多い今の時代、こんなバックスが持て囃されます。

しかし、こんな事が少し上手くても強いチームは勝たせてくれません。システムの中でうまく立ち回ったところでチャンピオンシップゲームの60分を凌げないんです。時には力技で強引に相手の手中からボールを奪い取り、集まった敵をハードヒットで蹴散らかして自分だけが生き残りエンドラインを駆け抜ける。

鍛え上げてきた絶対的なスキルとスピードとパワーに裏打ちされた自信を、作戦の上に乗せて勝負するのがフットボールの真髄なのです。心と体を鍛える時間を過ごして来ていない選手など、本物からすれば立ってるだけ。只のハリボテです。ハリボテでは決して本物に勝てないのです。

本気でフットボールをしている選手諸君は、若ければ若い時ほど早ければ早い時ほど真剣に心と体を鍛え始めるべきです。初心者の時に比べて強く早くなった自分をどんどんアップデートさせる為に新しいファンダメンタルとスキルの習得に明け暮れるのです。

昔習った「あのやり方」があなたのファンダメンタルとスキルの限界でしょうか?絶対に違うと思いますよ。プロ選手じゃなくとも、アメリカ人全員が当たり前としている「正しいファンダメンタルとスキル」を正確にレクチャー出来る指導者は国内に極めて少なく、わかりやすい情報も殆どありません。見ようと思えば、検索しようと思えば、無数に情報をキャッチできる世の中ですが「ニッポンフットボールの色メガネ」を通してその情報を見ても何も気づかず何の新情報も掴めない事が殆どです。

また、ニッポン人の能力では「そりゃ無理だ」という意見もよく聞きますがそれはアンタがちゃんとしたフットボール知らないからそう感じるのです。

ニッポンのフットボールを衰退させて枯れさせたく無いのであれば、若年層に正しい指導をしていかねばなりませんね。機会があればプロ経験のある我々もサポートしていくつもりです。

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高校時代から「正しいフットボール」をしてきた彼らが甲子園ボウルに帰ってきますね。そうです。1年生を中心メンバーとして3年前に甲子園ボウル優勝の日本大学フェニックスです。最強軍団の関西学院大ファイターズとの3年ぶり「赤対青のリマッチ」がとても楽しみです!!

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