多聞コラム19mar2019_vol,222「ゴリゴリ多聞、自伝を語る77」NFLE2年目2

1999年3月9日

関西空港からドイツに到着。NFLが用意してくれているホテルに宿泊します。夕食はレストランで食べましたが、ビールもたらふく飲みました。何と言ってもお代はNFLが払ってくれますので僕は伝票にサインするだけ。「そんな事してあとで請求きたらどないしますのん」と河口正史氏にたしなめられても飲まな損や!とばかりにガブ飲みしてやりました。もちろん請求は来ませんでしたので呑み得でした。

1999年3月10日

翌朝はドイツ人選手ら10名程と一緒にフロリダ州オーランドへ到着。集合場所のホテルには昨年度と同様6チームのプレーヤー全員がウジャウジャと集まっていました。プロチームの仕組みは、毎年解散してまた翌年に集まり新チームでスタートする、と言った方がわかりやすいと思います。入団が古いと「兄さん」や「センパイ」となる日本と違い、よほどのフランチャイズプレーヤーでなければ皆同格になります。ご存知の通り年齢での上下関係もありません。

「ラインファイヤー1999」という昨年とは違うチームが結成されるというわけです。例によってメディカルチェックが始まっています。半裸の超マッチョマンらが約500人ウロウロする光景を見るのも1年ぶり。しかし昨年のように「こんな奴らと戦えるはずが無い!」と弱気になる事もなく、こいつらの筋肉は見せかけだけ。強さは同じ。何なら根性は俺の方が上じゃ!くらいの意気込みで裸の団体に貧弱な体で突入しました。

昨年は気まずくて恥ずかしくて困惑まくりだった「白衣のオッさんにティムポをジーーッと見られながらの尿検査」も緊張せずサクッと完了。雑誌1冊分くらいの契約書全てのページに目を通しサインする作業も今年はイチイチ英文を読まずにサササと済ませ、貴重な休憩時間を有意義に過ごすため直ぐに部屋へ。

昨年のルームメートは風呂に入らないドイツ人のオーレくんでしたが、今年は普通のアメリカ人。日本からきたRBのタモンだよ。今年で2年目よろしくね!なんて挨拶してミーティングに向かいました。

プレーヤー80名強、監督、コーチ6人、スタッフ4人、トレーナー3人のおおよそ100名で構成され、プレーヤーはここからカットされるのでヨーロッパに行く時には確か53名に絞られます。トレードや解雇、ここからの30日で悲喜交々なドラマが生まれます。

昨年のチームに居た顔なじみは約10名。つまり優勝メンバーですね。おじいちゃん監督のホールコーチが「おい!おんどれら!今年も優勝目指して頑張るで!気合い入れろや!」なんて感じでチーム最初の全員集会は終了しオフェンスディフェンスに別れてミーティングです。そのあとはバスで10分ほどのグランドに行き軽く運動してホテルに戻って夕ご飯。23時までミーティングで就寝。明日からは恐怖の午前午後練が始まります。昨年同様、1回目のオフ日がいつなのかはアナウンスされませんでした。

1999年3月11日

日本を出発して3日目。最高の食事ばかり提供される幸福が僕のやる気を増幅させています。3食の全てが食べ放題。農耕民族が胃袋の隙間を埋める為に開発された「ライス」など出てきません。お腹いっぱいになるまで肉類を貪り続けられるのです。何だかよくわからない野菜の料理にも肉が入っています。もちろんピザやバーガー、ホットドッグなんかも出てきますので、僕にとっては完全なる楽園です。しかも大好きなフットボールで給料がもらえるのです。この時点で東洋人が到達できる最高峰で、ランニングバックしていればお金が貰えるなんて、こんな幸運はありません。僕のような人間性でも感謝の気持ちが心の底から湧いてきました。

しかしこれから恐らくやってくるだろう「スネいた(前週参照のシンスプリント)」への恐怖は残っています。日本で立てたシュミレーションでは、引っ掛かりの悪いシューズで練習し負担を減らす。でしたが、引っ掛かりが悪いと動きのキレが悪くなり、鈍くて遅い奴のレッテルが貼られてしまう恐れもあります。が、ギュンギュンに引っ掛かるシューズで飛ばしまくってズーーッと「スネいた」に苛まれるのも怖すぎます。チーム関係者からの評価か「スネいた」かを直前まで選ぶことが出来ませんでしたが、やっぱり「スネいた防止」を優先することにしました。メディアデー以外はチーム支給のシューズ以外の使用が許可されていましたので問題はありません。フカフカに生い茂る天然芝で引っ掛かりの悪いシューズでプレーした経験はありませんが、なるべく滑らないよう低重心に注力して丁寧に走ればどうにか行けるだろうと決心しました。

セットプレーや各種ドリルなどコーチ(RBコーチはホール監督が兼任ですから凄いプレッシャーです)の見ている時にスリップダウンしてはダメですので、練習前に素早い動きから急ブレーキや激しいカットを踏んだりして、シューズとフカフカ天然芝の相性をチェックです。どんな速度でどの角度まで体を倒したらスリップするのかのデータ取りからです。実際にスリップし始めてから荷重が抜けるまでの感触と時間、前後の動きと横への動き、コケまくってコケまくって徹底的に試したところ、結構イケる!ことが判明しました。フカフカの天然芝にゴム底の小さなイボイボが結構食い付くのです。しかも少しの遊びがあるので足への負担は確実に軽減されると見込みました。

体調もかなり作ってきていたので万全。これまでの自分でイチバンのコンディションです。コリャ今年はイケるで!NFL入り確実やな俺!

と調子に乗る僕でした。

タイトルとURLをコピーしました