多聞コラム22mar2017_vol,160「ゴリゴリ多聞、自伝を語る69」チャレンジャーズ4

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アサヒ飲料に入部してこれまで2試合で1TDの90ヤード獲得。次は第3節のイワタニ戦です。ここでナント初のスターティングメンバーにして頂きました。会場は西宮球技場です。手入れが完璧に行き届いたNFLの天然芝に慣れた気取りの僕は生意気にも「土なんかイヤだなー」なんて思ったりしています。3部リーグだった学生の時は、どこかの大学のグランドではなくこの西宮球技場で試合ができる時は嬉しくて嬉しくてたまらなかったのに、偉くなったもんです。初心を忘れて調子に乗ってますね。

アサヒ飲料が先制点を取るもイワタニのQB大橋選手(立命館OB)のパスでスグに返され同点。しかしなんとか逃げ切って結果は23-7で3勝目です。今回は僕にチャンスが多く与えられボールを15回持って140ヤードで2TDの活躍でした。1部リーグでプレーして4年目、公式戦で初めて100ヤード以上を記録した記念すべき日になりました。カッチンコッチンの土の上で何度も何度もタックルされて引きずり回されましたので両肘の周りが擦り傷で血だらけです。

アサヒ飲料に入部してこの日まで1ヶ月強、藤田ヘッドコーチから信用される、つまりは自分を武器として使って貰えるようになる為にはどうすればい良いのか? 29歳の「新人多聞」はNFLに絡んだこの半年間で、本物のアメリカ人プロ選手やプロコーチらから学んだり感じた事をできる限りプレーで表現しようとしていました。

3ゲーム目で、2人(もう一人の1軍選手「暴れ馬丸山」は欠席)で順繰りに交代するとは言えスターティングメンバーに抜擢され、しっかりした結果を出すことによってようやく日本のトップリーグでマトモな実績を残すことが出来たのです。

このあとも継続して安定した活躍を見せなければ今回のは「マグレ」となり、日本を代表するどころかチームの代表にもなれません。活躍できたと喜んではいられません。この先の練習も試合も普段の平日も「昨日より良い選手になっているかどうか」「期待に応えられているかどうか」を自分に問う毎日が始まるのです。

これまではレギュラーを目指して上手くなろうと必死に頑張る!というのがフットボール選手中村多聞の仕事でした。これは全然プレッシャーが無く、失敗しても恥ずかしいだけ。元々ない信用は無いママなだけ。しかし登り始めた自分の立場は「守るべきもの」となってしまいました。「多聞凄いな!」といつも思われたい。「多聞は頼りになる」「お前を頼りにしてる」と思われたい。選手として自分ではまだもう少し向上出来るという自信はあったのですが、これから積み重なるであろう信用や実績を失うのが怖くて怖くて仕方無くなってしまいます。自分の頭だけで勝手に生み出した大きなプレッシャーを背負ってしまうのです。

それを跳ね除ける為に自分が出来る事は、毎回の練習で常に実力以上のレベルを追求して挑戦し続ける事。全力でプレーする事。全速力でスクリメージを駆け抜ける事。本気の本気でヒットする事。今まで日本にいた時には出来なかった、というか目標にしていなかった事ばかりです。結果にばかり目が行き、ついつい守ってしまい、だんだんつまらない選手になって行くところでした。しかしこういう事がいかに重要か。格闘技で自分を高めて行くには映画のロッキーなどと同じく「人生の全てをかけて全力臨む」という事を本当の意味で理解していませんでした。

しかし半年ほどアメリカ人らの人生をかけたフットボールを体験し、真髄を知ってしまった上に、発揮する場所まで与えられたのですからヤルしかありません。次節は先月クビになった古巣サンスターファイニーズです。パナソニック、マイカルに勝利しているのでこれに勝てば我々はプレーオフ進出が決まります。上手くいけばリーグ優勝もあり得ます。前年度に入れ替え戦出場のチームがリーグ優勝したという記録はアサヒ飲料以外にあるのでしょうか?凄い事になってきました。

そしてこの頃は建設会社のサラリーマンをしていましたが、フツフツと「BAR」をやりたい衝動が復活してきました。サンスター時代も常々その欲求はあったのですが、今回はフットボール界で名前も売れてきたし上手くやればお客さんたくさん来るんじゃ無いか?なんて甘い考えでとりあえず梅田の街を物件探しに出かける機会(まだネットは普及していない時代)が増えてきました。そんなヒマあるならトレーニングやミーティングしろよ!と昔の自分に言ってやりたいです。

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