自分は24時間365日、とてつもなく運動や練習、身体やフットボールの勉強をやり続けているのですが、チームの水準から見るとまだまだホケツのレベルのままです。
そしてレギュラー&スター組と言えば、殆どの選手が昔取った杵柄でプレーしており、テレビで見たスター達は昔より能力が落ちているか殆ど変わっていません。が、もちろん僕なんかよりは遥か上のレベルでフットボールをされています。
しかし冷静に考えれば、「これはいったいどうした事か?」となります。彼らは練習で集まる毎に、遊びの企画を話し合い、合コンやナイトクラブでの楽しい日々を語り合っています。僕は年に数回、試合後の打ち上げのような会だけには参加していましたが、日常に彼らと遊んだりした経験は殆どありません。極端に表現すれば彼らにとってフットボールも楽しい事の1つ。趣味であり特技なので他の遊びよりは熱心に取り組むが、僕から見れば真剣味が全然足りていません。
彼らを一流選手、我々を三流選手と定義づけるとこうなります。
一流は能力が落ちないように維持しているだけで向上していない。関学OBの埜下雅基さんは練習前にいつも「今日も上手くなって帰ろな!」と全員に仰っていましたが、一流選手の殆どは毎日上手くなっているようには見えませんでした。しかし三流は一流と練習場で触れ合うだけで能力が上がります。見た事も聞いた事も無い用語や練習方法を知り、必死で反復するからです。努力すれば彼らに近づくことを体感出来るので自分が伸びる事が楽しいのかもしれません。また、一流は仕事も遊びもしっかりやる。でも三流は遊ぶと選手としてオシマイになるので脇目も振らず一流になる事を目指します。
遊んでばかりで努力をそれほどやらない(ように見えている)一流選手達に何年間も何年間も憧れて彼らの出場しているテレビで放映された試合のVTRを何度も何度も繰り返し観て、そしてようやく横でフットボールをさせてもらえているのに、彼らのアタマの中には「勝利」や「優勝」「努力」「根性」というような物が無いという事に気付いたのです。知ってしまったのです。少なくとも「負けたい」とは思っていませんが、どんなに辛くてもどんなにしんどくても、優勝出来るなら何だってヤル!という気概はありませんでした。
チームに所属しているのは「楽しいから」。気の会う仲間と高いレベルで競技して、テレビや新聞雑誌に載るわけですから心地も良かったでしょう。しかし既に関東の強豪チーム(オンワード、アサヒビール、鹿島建設、富士通、リクルート、日産、他)とのレベルの差は埋められない物になってしまっている事に誰も目を向けない風潮になっていました。ましてやWESTにはマイカルベアーズと松下電工インパルスが立ちはだかっているのです。
尊敬する一流選手達は一般のお父さん程度にしか重量挙げも出来ず体力もありません。スプリント走も持って生まれた能力だけでやっています。得手不得手はもちろんあるでしょうが、殆どの一流選手が必死の努力をしていない。コレには本当に驚きました。でもフットボールは巧いので試合では我々三流選手より遥かに頼りになるし良いプレーもします。コーチのとっさの判断で練習をしていないプレーでもそれなりに理解してソツ無くこなします。何をどうすれば僕もあんな風に上手くプレーが出来るようになるんだろう?コーチに頼ってもらえるようになるんだろう?と悩み続けます。
そして僕なりにこの環境にそれなりに慣れてきたので、3軍から2軍、1軍半くらいまで登ってきました。試合にも少しはローテーションで出場させてもらえるようになってきました。
2年目のシーズンが始まり、コーチが変わって方針が変わり、日曜日の練習が家族サービスの時間を増やすべきだとか言う理由で、休みが増えるという事でした。それでなくとも平日の夜はあまり人が集まらず全体練習に支障を来す事が多かったのに、土日の1日を休みにするとは、練習量が格段に減るので僕らの上達が遅くなることは明確です・・・。
スプリント練習、ウェイトトレーニング、フットボールの練習、メンタルトレーニング、ニュートリション、あらゆる可能性に賭けていた自分のやり方をこの機会に変えてみようと思いました。チームでイチバン重りが挙がっても情熱があっても試合に出て活躍する事とは全く違うわけで、結局はフットボール理解度がチームでの最重要項目だと自分の中で決めてしまいます。
そこでウェイトトレーニングなど全部辞めて、「ボクシング」を始める事にしました。たまたま知合いに当時のWBA世界フライ級チャンピオン山口圭司氏が居たので彼に尋ねてみた所「ジムに来てもらったら僕も教えますよ!」と快諾。早速グリーンツダボクシングジムに入会しました。そこには僕と同い年の元世界チャンピオン2階級制覇の井岡弘樹氏も居て、ジムの中はフットボール場に足らない「ヤル気」「根性」「優勝」「勝利」がムンムンとしています。ギラギラした情熱に溢れかえっているのです。中学生が世界を見て真剣に取り組み、選手全員が全力で限界に挑戦し続けているという環境は当時の僕が最も欲していた環境のひとつだったのかもしれません。そういう所に身を置く事で、甘えていた気持ちや感覚がまたビシッと引き締まりました。そしてもう1つボクシングに期待していた事は、とても早い速度で身体を動かし、尚かつ強く動く。両手でのコンビネーションは全てのスポーツの中で最速であり、その為のトレーニングを考えただけでワクワクしてきます。当然試合も練習も過酷。なはず。この動きが身に付けばランニングバックとしてまた一枚も二枚も上に上がれるんじゃ無いかな?なんて考えました。フットボール鷹は合気道を習得して走りに磨きをかけましたからね。
